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  <title>～クエストを探して～　さよかみ！</title>
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  <description>オリジナルの中世ファンタジー小説</description>
  <lastBuildDate>Wed, 13 Apr 2011 15:08:38 GMT</lastBuildDate>
  <language>ja</language>
  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
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    <item>
    <title>57 [ハコザの館]</title>
    <description>
    <![CDATA[<font color="#cc99ff">マコトは火の海の中を駆け抜けていく。<br />
獣の嗅覚を使い、タイジの匂いを探る。<br />
夥しい焦げと煙の香りを振り切って、なんとか探り当てようとする。<br />
軽装の鎧を身につけた、少女の身に炎の魔の手が忍び寄る。四方八方が、揺らめく紅に炎上中の地獄回廊の中、だがマコトは熱さに堪えて、感覚を研ぎ澄ませ、捜索を続けた。<br />
どこにいる？<br />
館は既に半壊している。ところどころ天井が抜け落ち、床は抜け、通行が不可能になっている地点が多々ある。それらは断固として現在進行形！<br />
普通、こんな火災の真っ只中に身を投じるなど、オーヴァーキルな自殺行為としか考えられない。<br />
だが、マコトは普通ではない。<br />
第一に、彼女は超人である。<br />
もちろん、超人といえど、煙の吸引で意識を失い、<strong>その身を許容量以上に燃やし尽くされれば</strong>、『超人の死は肉体の消滅』というルールを待たずに、完全死を迎えることになるだろう。彼女は頭領サキィにそうなって欲しくなかった。<br />
第二に、彼女は<strong>炎に対する並々ならぬ耐性</strong>を持っていた！<br />
「おーーい！タイジ！どこだァ！」<br />
少年のような顔立ちをした少女の、叫び声が炎の爆ぜる音に混じって、終末の館を突き抜けていく。<br />
見つからない！<br />
この炎だ。もしかしたら、崩れた柱の下敷きなって、身動きが取れなくなっているかもしれない。<br />
救助を買ってでたものの、マコトは徐々に焦りつつあった。<br />
「焦っちゃ駄目だ。オレは&hellip;」紅の髪を伝い、汗が顔にふりかかる。「余裕、そうだ、余裕&hellip;&hellip;これは、余裕というもんだ。<strong>オレだって、救ったこと、ある</strong>んだ&hellip;」遠い記憶の蘇り「たくさんの死と、絶望を見て、もう、こんなところで、終わったりしない、タイジ、お前だって、終わらせない！」その栄光と誇りを呼び戻す。<br />
狐族の剣士は、ぎゅらぎゅらと周囲を炎に囲まれながら、立ち止まり、円らな眼をつむり、意識を集中した。<br />
獣の聴覚を、全神経使って研ぎ澄ませた。<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;なんだ？」<br />
何かが、始まっている。<br />
途方も無い、何かが&hellip;&hellip;<br />
その中心に、タイジはいる。<br />
場所は&hellip;&hellip;ここから少し遠い、けど&hellip;&hellip;<br />
「オレの足で、間に合わないことはない！」<br />
再び、少女は駆け出した。もうこれ以上は形状を保っていられないと、崩壊寸前の炎の屋敷の中を。<br />
「！」<br />
疾走する少女の前に見えたのは、だが、予想もしなかったものだった。<br />
白い輝きが、眼前から迫ってくる。<br />
そんな&hellip;&hellip;これじゃあ、また&hellip;&hellip;オレは、助け出さなきゃいけないのに&hellip;&hellip;そう、頭領に約束したのに&hellip;！</font><br />
<br />
<br />
<br />
タイジの意識が拡大していく。<br />
僕はタイジ。<br />
マナとサキィと一緒に旅をしていた。<br />
マナのことはずっと好きだった。マナは昔、僕の二番目の兄セイジ兄さんと恋仲にあった。そして何年ぶりかに再会した晩、あまりに嬉しくてずーっと寝付けなかった。でも、その気持ちをあいつの前では伝えられなかった。もし、マナが本当に僕のことをからかってるだけだったらと思うと恐くって。あいつが今でもセイジ兄さんのことを好きでいるんじゃないかと思うと&hellip;それに、そんなことを言う気にもなれないくらいあいつはどうしようもないやつなんだ。だからそんなことはとても言えない。<br />
サキィは良い親友だ。いつの間にか仲良くなっていたあいつとはよく馬が合う。でも、時々、サキィが必要以上に愛情を注いできてる気がして恐くなる時がある。サキィは誰かの代わりに僕を求めているんじゃないかって思うことが時々ある。だけど、そんなことはとても言えない。<br />
恐い。<br />
今の関係が崩れてしまうかも知れないことが。<br />
だから僕はいつだって、変わらないことを欲している。何事も騒がずに、そのままジッとしていた方が良いじゃないか。何故、他の人はそう思わないんだろう。<br />
僕の意識が拡大していってるのがわかる。僕は暗い書庫の中に一人でいる。でも、ここの外の様子も分かる。この力が溢れているから。拡大した意識が外を捉えていく。館は猛火に包まれて今にも崩れそう。サキィは人々に逃げろと命じてい<font color="#cc99ff">た</font>。マナとアオイは慌てながらも僕の姿を探してい<font color="#cc99ff">た</font>。さっきまで話していた先生はもう死んじゃってどこにもいない。あの人は満足そうだった。あの人は僕の中にあるものを総て解放しろって言った。そんなことをしたらどうなる？<br />
さっき、光が見えていた。夜でも明るくなるような、光が。どんどん、色んなものが速くなっていく。明日の明日のずーっと先はどんな世界になっているの？僕の力を使えば、遠くの距離まで馬車なんか使わずにあっという間に辿り着くことが出来る。きっと、空だって飛べるようになるんだろう。たくさんの人にたくさんの仕事が与えられて、ご飯を作るのも洗濯をするのも、何もかもが早くなる。<br />
早くなる。速くなる。止まらない。止まらない。<br />
マナ！サキィ！どこにいるんだ！僕は、もうずーと、ずーっと先の先まで行ってしまったようだよ！誰だ？たくさんの人、行進している。大勢の人、世界中が一つになったみたいに、繋がって、でも、繋がらない、繋がろうとすればするほど、繋がらずに、苛立っていく、苛立ちはつもり、人が、人を憎んでいくんだ、便利な力で、人を、すぐに、殺せるから、世界の、はしから、はしまで、隅々まで、支配してやるぞ、たくさん、たくさん、支配できる、それが、力、あまりに速い、あまりに早い、はやすぎて、よくわからない、わからないまま、それでも、置いてけぼりならないように、どんどん、失われていく、大切だったものも、大切じゃなくなっていく、僕の、友達は、どこに消えた？マナもサキィも、いつの間にか、遠い昔、新しい、世界で、笑い合ってる、人たち、便利な道具に囲まれて、でも、本当は、通じ合えていない、昨日知ったのは、偽物の体験、なんでも、すぐに、調べられるけど、本当の、ものだけ手に入らない、大切な、人が、いなくなる、見つからなくなる、取り残される、人が、人を、愛するのは、憎むことより、もっと難しい、憎んだほうが、簡単だから、そっちの方が、楽だ、時間がかかる、それは我慢できない、人が、人を、知りえなくなる、わからなくなる、あまりにはやすぎて、見えない、見えなくても良いと思えてくる、僕は、ダメだろう、生きてはいけない、みんな、はやすぎるから、みんな、分かっている、分かり合えないってことを、それはとても時間かかるから、そんなことはしない、どんどん、次から次へ行かなくちゃ、置いてかれたら、おしまいだ、おしまいだ、おしまいだ、たくさん、人が死んでいくよ、よくわからないから、殺しちゃう、よくわからないものは、気持ち悪い、分からないのは、分かろうとしないから、分かる為の術を知らないから、繋がらない、繋がっているようで、何も繋がらない、どんどん、どんどん、次から、次へ、僕が、拡大していく、止められない、誰か止めてよ、止めてよ、僕を、誰か、ねぇ、止めてよ、僕を、止めてよ、マナ！どこではぐれた！サキィ！もう会えないのか？僕はついていけない、ぐーたらなんだ、こんな、スピードじゃ、止めて、僕を、止めて、止めてよ、止まらないよ、止まらないよ、止まらないよ、僕を、止めて、止めて、兄さん！兄さん！どこへ消えた？いなくなったまま！僕と、マナを置き去りにして、今、一体どこにいるんだよ！セイジ兄さん！姿を見せろよ！僕に教えてくれよ！<br />
タイジの瞳に数百年が映っていた。<br />
<br />
「タイジ、一人で行っちゃうなんて、ズルイよ」<br />
マナの声が、聞こえた気がした。それは何百年も離れた過去から届いた響きだった。僕はそこへ帰りたい！マナもサキィもいない未来なら、そんなもの、いらない！<br />
<br />
「タイジ、お前は未来を諦めるのか？たくさんの人々が、それを望んでいるのに&hellip;」<br />
「兄さん、僕は思うんだ。何もかも急ぐことが、正しいこととは限らないって」<br />
猛スピードで切り替わっていく世界の映像に包まれながら彼は次兄と会話をしていた。<br />
<br />
「僕は、へタレだ。こんな、早い速度に怖気づく。でも、大切なものを、過ぎ去っていく残酷な時間の中で失ってしまいたくは無い」<br />
「失望するよ、弟。俺はお前の考えには賛成出来ない。まったく子供じみた甘ったれた思考だ。だが、お前が望むものを止めるつもりもない。俺には関係ないことだからだ。お前達のずっと先にいる世界にいる俺には」<br />
セイジの姿が遠のいていく。<br />
<br />
<br />
「僕は、そういう人間だ。だって、会いたいんだ。たくさんの人々の未来を犠牲にしても！世界を、世界を、このまま進めたくはない！マナやサキィと一緒にいたいんだ！」タイジが動かした世界、水平な滝のように怒涛の流れの世界、それを逆流させる。元に戻してやる！電気なんて、存在しない。夜は真っ暗。封じてやる！良いんだ、それで&hellip;止まれ、文明！止まれ、未来！神様なんて信じるな！<br />
世界よ止まれ！<br />
世界よ止まれ！<br />
世界よ止まれ！<br />
世界よ止まれ！<br />
世界よ止まれ！<br />
世界よ止まれ！<br />
世界よ止まれ！<br />
世界よ止まれ！<br />
世界よ止まれ！<br />
世界よ止まれ！<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<font color="#cc99ff">様々な時代の人々、民族の姿、建築物、芸術品から日用品に至るまで、人の手が生み出した、或いは生み出す予定となっている発明品、道具、それらを扱う人物たち、人類の歴史、経済産業の産物、やがて取って代わるであろう機械という悪夢の種族まで、それら未来に位置するあらゆるものが尊厳を奪われ、目を覆う目映い光の中に<strong>埋葬されていく</strong>。<br />
<strong>本当の『中世』が始まる。</strong><br />
今、この時より、文明の進化を放棄した、永遠の停滞の時代の幕開けとなる。<br />
一度はじまって、二度と終わらない、横這いの世界。信仰と、封建と、剣と魔術の世界。<br />
未来は巻き戻され、光の中に投棄されていく。<br />
その最中、タイジの光の中から、一匹の獣の姿が揺らめく。<br />
小さい、悪戯好きそうな小動物の影は、やがて狐の容姿を取る。<br />
光の鎮魂歌の中で踊る狐の影&hellip;&hellip;マコトは、手を伸ばした！<br />
掴む為に！<br />
救うために！<br />
タイジを&hellip;&hellip;世界を捨ててまで、友を&hellip;&hellip;救うために！</font><br />
]]>
    </description>
    <category>クエストを探して</category>
    <link>http://questquest.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%A6/57%20-%E3%83%8F%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%81%AE%E9%A4%A8-</link>
    <pubDate>Wed, 13 Apr 2011 15:08:45 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>56 [ハコザの館]</title>
    <description>
    <![CDATA[タイジは大脳がとろけていくような気分だった。<br />
頭に刺さった針から、僕の脳が飛び出していく。僕の意識、無意識が飛び出していく。<br />
光がキレイだ。<br />
ピカーって光って、世界中を照らすようだ。<br />
いけない！考えること総てが外に飛び出していってしまう！僕の意識が拡大する！意識が拡大していく！<br />
明るい！そうだ、明るくなるんだ。夜でも昼のように、明るくなれるんだ。何度も夢に見ていたじゃないか。今よりももっと便利に、楽チンに暮らせる世界を。僕の力で、皆が、もっと幸せになる。電気？電気っていうのか？それが世界中に駆け巡っていって、色んなものを繋いでいく。離れていたものを繋いでいく。一つになる。一つになっていくんだ！<br />
壁が崩れていく。<br />
館の崩壊が本格的に始まっていた。<br />
どこからか炎の爆ぜる音が煙と共に忍びよってきた。ハコザのトラウマ。館を焼き尽くす炎。<br />
「私は、もう自分が助かることを望んでいない」ヤーマは針を脳に突き刺したまま「私にはもう確信が持てた。神はいた！卑劣な神は、今もどこかで笑っている。この光景を見て笑っている。自分の存在など信じてはいけないなどと人々に言っておきながら、確かにそいつはいた。君の意識を暴き出したことでそれが分かった。<strong>君こそ作られた人間</strong>だった」ヤーマの顔が歪んで見える。「私が消える代わりに、君は思う存分やってしまうがいい。<strong>君の肉体は滅びない</strong>だろう！卑怯な神によって留められているその力を、思う存分解放するんだ。<strong>君こそが未来</strong>となるからだ！」ヤーマの体がタイジから放射されている閃光によってみるみる溶けていく。「これも、神に近づこうとした罰か&hellip;」<br />
私の力を君に与える。<br />
そして、神に復讐するんだ！<br />
君の中に封じ込まれている、未来へと繋がる力を解き放て！<br />
君が神の戒めをぶち破るんだ！<br />
<br />
<br />
<br />
<font color="#cc99ff">「ごめんなさい！ごめんなさい！」アオイの水晶のような瞳から、涙が溢れ始める。「アオイのせいで&hellip;&hellip;きっと、アオイのせいで&hellip;&hellip;」<br />
既に館は猛る業火の赤へと、完全に包まれていた。<br />
庭園に避難した人々は、皆、瞳に炎の照り返しを映し、崩壊していく、一人の男の禍々しい理想と夢の終末を眺めていた。ハコザという、罪深くも哀れな男の、これは盛大な火葬であるように思われた。<br />
だが、数人の男女は、まだ中に残っている友のことを想い、決断を迫られていた。<br />
タイジ。<br />
彼の姿だけが、この雄々しく燃え盛る炎の屋敷を前にした庭先に存在していなかった。<br />
「きっと&hellip;&hellip;もう外にいて、どっかに隠れてるんだよ&hellip;」マナはアオイを慰める為に、希望的観測の域を出ていない、無力な言葉をかけた。<br />
アオイは、この時、初めて自分を責めていた。<br />
占いや夢物語が好きそうな女の子の部屋に飾ってある人形のような格好をした、それこそ占いや夢物語が好きそうな少女、アオイ。<br />
いつも思い込みが激しく、自分の発想力は絶対だと信じきっていて、一度こうだと決めたらその妄念にとことん突っ走ってしまう、幼い少女。<br />
彼女が呪いの分野に傾倒し、それを行ってきたのは、ある意味必然な流れであったかも知れない。<br />
この世に許すことの出来ない存在がたくさんあって、だけども、華奢な乙女の体で出来ることは限られてしまう。<br />
ならば、せめてその私怨を、怨嗟を、怨念を、呪いに変えて、自分を守ろうとした。自分に害をなすもの、気に入らないものを、すべて闇色に染めさせ、呪いをかけようとした。<br />
すべては無力な己の弱さからであった。<br />
両親の課した禁欲の暮らしが、彼女をそうさせたのだ。貴族の家訓を頑なに押し付けたせいで、アオイはマナへ異常なまでの愛を求めたし、それを阻もうとする者には、徹底した敵意と憎悪と殺意をたぎらせた。<br />
「アオイの&hellip;&hellip;呪いのせいで&hellip;&hellip;」<br />
マナの反対側から、トーゲン家の女執事が主君の肩を抱いている。彼女もアオイにかけてやるべき言葉を持ち合わせない。<br />
「大丈夫だよ、タイジは&hellip;&hellip;」マナの瞳が、まるでアオイの涙に誘われるように、潤みを帯びていく「タイジは&hellip;&hellip;しぶといやつだから&hellip;こ、こんな、ボヤなんて」<br />
崩壊する館から、再び大きな炸裂音が響く。<br />
人々の間から喚声がわきおこる。柱や壁が崩れていくのを見る。<br />
「クソ&hellip;&hellip;ッ」サキィ・マチルヤは獣の爪をたてて、自身の体を必死に抑えようとしていた。今、自分が駆け出すべきではない。頭ではわかっている、だが！刻一刻と、友の生還の可能性は薄れていく。「クソ！クソ&hellip;&hellip;おい、魔術師たち、消してくれよ&hellip;&hellip;この炎を」<br />
「無理だよ、サキィくん&hellip;&hellip;」マナの声は震えていた。無力さに、絶望に、どうしたらいいかわからず「魔術では消せない&hellip;&hellip;炎は生きていない、ボクらの魔術は、<strong>命のあるものにしか効かない</strong>んだ」<br />
「役立たずがァ！」<br />
サキィは思わず激昂してしまった。<br />
「ボクだって！そうしたいよ！でも、前にも言ったでしょ！」マナも悲鳴のような声を上げる「たとえアオイちゃんの<strong>水流を使っても、消せない</strong>んだよ！」<br />
近代以前の火消し。<br />
それは現代社会とは比べものにならないほど、原始的で非力で、もはや人は炎の暴虐の前に為すすべもない、赤子のような技術しか持ち合わせていなかった。<br />
ポンプなどない！消防車も無ければ、消火器も大水流も無い！<br />
この記述が<strong>最後のハイファンタジーとローファンタジーの境</strong>となるだろう、中世において、人々の科学技術はあまりに未熟！彼らは炎のゆらめきをただ嘆きながら眺めているか、せめて庭園の池の水を、桶を探してきてふりまくか、その程度の些末な抵抗しか出来ず、再三述べている通り、空間を歪めて突拍子も無くアオイという少女の腕先から、この狂い舞い上がる火炎の坩堝をかき消すような水の放射なども、決して起こり得ない！<br />
<strong>あまりに無力！それが中世</strong>！<br />
夜風は炎の盛りを相乗させる。庭の池の水を全部かき集めてぶっ掛けても、とても鎮火するような勢いではない。<br />
祈ること。最後に、中世の人々に残されたものは、祈り。科学は無力。精神の力にすがるしか、もはや無い！<br />
「頭領！」<br />
「マコト！どうだ！」サキィは赤毛を揺らして自分の元へやって来た部下の少女に「いたか？タイジはいたか！？」<br />
「避難者の中には、いなかった」パチパチと火花が散る中、大きな丸い瞳を真っ直ぐに見上げ、狐族の少女は報告する「彼がいるのは&hellip;&hellip;あの中だ」<br />
「そうか&hellip;&hellip;」サキィはもはやこれまでと、長い髪で目元を隠し「マナ、すまなかった、さっきは、苛立ってて、ついあんなことを&hellip;」<br />
「サキィ、くん&hellip;」マナは涙で塗れた顔で「まさか&hellip;&hellip;」<br />
「俺が戻った時は、三人でまた、酒を飲もうな。いつかみたいに&hellip;お前のマズイ飯も、そん時なら食える気がするぜ」<br />
サキィ・マチルヤは友を取り返すため、一人、炎の権化と化したハコザの館へと、足を踏み入れようとした。<br />
だが、彼の長身の肩を、引き止める者がいた。<br />
「頭領、あんたじゃない」勇敢な少年の姿をした獣人剣士は「ここは、オレ以外の人間が、出る幕じゃない」幼さの残る顔に、決死の覚悟を浮かべて、言い放つ。<br />
「マコト&hellip;&hellip;だが、俺は」<br />
「あんたとタイジの仲は、そりゃ深いものだろう。付き合いは、オレなんかより、全然長い。だけど」マコトの相貌はとても冷静だった「感情で流されて、<strong>すべてを台無しにするようなことは絶対するな</strong>って、あんたはいつも言ってただろ？それが、オレたちのカンパニーの鉄則ってさ」若き獣人の少女剣士は「今のあんたは、自分があいつを救わなくちゃいけないって、そういう眼をしている。だけど、それは間違っている」賢しげに、上司であり恩人である、長い髪の猫族剣士を諭すように「これは、オレの仕事だ。そうだろう？それとも、あんたの役をオレが代わりにするのが、嫌かい？オレには、その資格が無いと、言うつもりか？」<br />
サキィは打ちのめされた。<br />
またしても、自分の半分より少しぐらいしか齢を重ねていない、この若い世代が、正論を叩きつけ、戦場で最も重要な、冷静な思考と決断を突きつけてきた。<br />
サキィは僅かに恥じた。僅かに、自分を責めた。<br />
サキィはマコトの、大きな丸い瞳を見つめた。そこに、どんな炎にも巻き込まれない、決してかき消せはしない、決意の紅蓮があった。<br />
「行ってくれるか？」<br />
「もちろん」マコトは笑みを見せる。「オレはこの程度の炎で焼け死ぬことはない。保証するさ、火事場はオレの独壇場」赤毛を揺らし「タイジは、オレと一緒に仕事をした、オレの仲間の一人だ。絶対に、何があってもあいつをここに連れて来てやる」<br />
狐族の剣士は最高の自信に満ちた笑みを、帰らぬ友を待つ不安げな人々たちの眼にくっきりと焼きつかせ、炎の館へと、駆け出した。<br />
狐の尻尾が、翻って舞った。<br />
「アオイは&hellip;&hellip;アオイは」地面にへたり込んだまま、泣くことしか出来なかった少女は「祈ります。炎の精霊に、あの方に加護を与えることを&hellip;そして、全精霊に、二人の無事を&hellip;&hellip;」しゃくり上げて、涙に濡れた声で「そして、もし、祈りが届いたなら&hellip;&hellip;いつかは、呪詛の世界ではなく、天にきらめく星々の元で&hellip;&hellip;」そう、呟いていた。</font><br />]]>
    </description>
    <category>クエストを探して</category>
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    <pubDate>Wed, 13 Apr 2011 14:53:06 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>55 [ハコザの館]</title>
    <description>
    <![CDATA[<font color="#cc99ff">「死にたくない奴は早くしろ！だが、走るな！将棋倒しんなっちまうだろが！」<br />
サキィは大声を張り上げ、火の手の上がった館の一階ホールで、人々の避難誘導を行っていた。<br />
出火の出元ははっきりしていない。ただ、気がついたときには屋敷のあちこちから炎が巻き起こり、一つの炎は別の炎と結びつきあい、加速度的に勢いを増していっている。<br />
<strong>マコトの火の探知</strong>が僅かに早かったのが幸いしたか、館二階以上にいた招待客に、すぐさま避難を呼びかけ、焦げ臭い匂いをかいでいた連中は、我先にと階下を目指した。<br />
「おら！急げ急げ！焼け死にたいかぁ！」<br />
サキィは「走るな」と「急げ」を同時に命じるという無茶振りで、人々を建物の外へと追い出そうとしていた。<br />
ふいに、もくもくと迫ってきた黒い煙を見て半狂乱になった貴族の婦人が、階段で足を滑らし、あえなく階を敷き詰めていた人々を、文字通り将棋倒しにしてしまった。<br />
「ゴルァ！走るな言ってるだろうが！」<br />
幾つもの悲鳴が上がる。<br />
そうこうしている間にも、火炎の勢いは増していく。<br />
「まずい、頭領、あんなにたくさんの人が倒れてちゃ、逃げ遅れてしまう」マコトが言う。<br />
サキィはおしあいへしあい、蠢いている人の群れを見つめ、ヒゲを苛立たしげに動かしながら「しゃぁない、ゲン、お前の出番だ。言っても聞かねぇあいつらを、片っ端から外へ投げろ」命じた。<br />
「ホントにいいのか？」と低く落ち着いた声で言いつつも、巨漢の射撃手は依然倒れて積み重なったままの人々のところまで、ずーん、ずーん、と歩いていき「ちゃんと受身を取れよ」と呟くと、倒れていた人間の足を掴み、一思いにそれを後方へ放り投げた。<br />
「ｧｧァァアアアアアアああああアアアアアアｱｱｱｧｧｧ」<br />
「げ&hellip;&hellip;ゲンのやつ、なんてことを&hellip;」<br />
マコトは呆れてその様を傍観していた。<br />
屈強な大男は、その豪腕でもって宴の招待客の体をひょいと持ち上げ、スイングをつけて館の外へと放り投げる、投げる、投げる！<br />
貴族も、使用人も、学生も、偉丈夫も、投げる投げる分け隔てなく、投げるッ！<br />
どんどんどんどん、ポイポイポイポイと、まるでおはじきを掴んでは投擲する玉拾い競技のように、人間の体をいとも容易く、投げ飛ばしていくゲン。<br />
「見ろ、マコト。あいつのブン投げた奴の、軌道を」<br />
「ええ？」<br />
サキィに促がされ、マコトはゲンの人間射撃の弧を、大きく丸い目で追った。<br />
足を掴まれて飛ばされた宴の招待客は、ゲン自らうがった館の壁の穴を、曲芸師の火縄潜りのように、するりと通り抜け、更に庭園に築かれた池の中へと、水飛沫を上げて適確に着水していっている。<br />
大人の体を軽々と持ち上げて放る彼の腕力もさることながら、やはり射撃の腕前は超一流というべきか、むっつりとした顔のまま摘み投げていくゲンの射出コントロールは、一寸の狂いもない、完璧な軌道を呈していた。<br />
「あの、ウスノロ&hellip;&hellip;こういう時にだけは調子が良いんだから」マコトは苦笑いで戦友の活躍を眺めていた。<br />
その時「サキィくん！」<br />
「お！マナか！」サキィは二階部分の廊下から顔を覗かせた魔術少女を見て「まだ残ってたのか！お前も、早く脱出しろ！煙にまきこまれんぞ！」声を荒げて避難を呼びかけた。<br />
マナは豪奢な服に身を包んだ小柄な少女、アオイと一緒だった。<br />
「ねぇ！タイジは&hellip;ッ！」<br />
「なんだ？タイジが&hellip;？」サキィは頭上を見上げて大声を上げながら、しかし眼をこらしても親友の姿を見つけることが出来ずに「タイジはどうしたんだァッ？一緒じゃないのか！」<br />
逃げ惑う人々の喧騒で、よく聞こえない「ねぇ！サキィくん、タイジはどｋ&hellip;&hellip;」<br />
一際、大きな爆発音が聞こえた！<br />
炎の勢いが、猛然と増していく！<br />
マナは舞い起こる煙でむせてしまい、サキィにタイジの所在を尋ねることも、また階下にいる彼の方に眼をやることも出来ない。<br />
「ゴホッゴホッゴホ、うう&hellip;&hellip;苦しい」<br />
「お、おおお姉さま、危険です。アオイたちも、早く逃げましょう」<br />
アオイは慕う先輩少女の服の裾を引いて、促がした。<br />
「でも、まだタイジがどっかに&hellip;」<br />
「きっともう、先に逃げていますよ！だからアオイたちも&hellip;&hellip;ケホッ、ケホッ」<br />
アオイも煙を吸い込んでむせる。<br />
火災にあった時、<strong>何よりも恐ろしいのは炎そのものではない。煙を吸い込むことによって生じる一酸化炭素中毒</strong>だ。<br />
火事で命を落とす人の死の原因は、往々にして酸素欠乏による意識の消失が故。<br />
マナはアオイの苦しそうな様子を見て、ようやく危機意識を持ち始めた。<br />
先ほどから、忽然と姿を消したタイジを見つける為、屋敷のあちこちを探し回っていた。その間に、炎の手はもはや取り返しのつかないほど、大きくなってしまっていた。<br />
タイジを見つけ出す前に、自分達が焼け死んでしまう！<br />
そう思った時、誰かが、音もなく、まるで天井から壁を伝って降りてくるかのように、現れた。<br />
「お嬢様、お待たせいたしました」<br />
<strong>誰？</strong><br />
マナは、その流暢な声とピシリと整った身のこなしに、どこぞのイケメン貴公子でも現れたかと錯覚したが、側にいたのはアオイの従者、男装の麗人、トーゲン家執事のヤムーであった。<br />
「さあ、マナ様も、ここは危険です。私に掴まって下さい」</font><br />
<br />
「来なさい。その為に私は君をここに呼んだ」<br />
ヤーマ教授は恐ろしく落ち着いた様子で言った。<br />
「この隠し書庫には私の研究成果の総てが詰まっている。ハコザが死んだら総ての証拠は消すつもりでいた。面倒は嫌いだからね」<br />
傲慢！「行きます！」タイジは指先に雷の力を込めていった。<br />
「だがね」<br />
一瞬だった。<br />
ヤーマ教授は素早くタイジの目の前に移動していた。<br />
「私は君と戦うつもりは無い。私は勝負なんてものに興味はない。あるのは君のその潜在能力だけだ」<br />
「！」<br />
タイジは為す術がなかった！<br />
ハコザの比ではない。<br />
このヤーマという人が真の黒幕だということを身を以って実感した。<br />
おっとりした普段の彼からはとても想像出来ない身のこなし。レヴェルが違いすぎる。<br />
気がついたときには頭に刃物を突き刺されていた。<br />
「良いから、そのまま唱えなさい、魔術を！」ヤーマはタイジの額に<strong>針のようなもの</strong>を深く差し込みながら言った。「君はこんなことでは死なない。いや、死なない体になっている筈だ」針は大脳に達している。<br />
この位置から&hellip;ま、魔術を！<br />
タイジは脳に針を埋め込まれたまま無我夢中で詠唱した。<br />
<strong>purple haze all in my brain!!!!!</strong><br />
「それでいい」<br />
光が、溢れ出す。<br />
紫の閃光が。<br />
脳に突き刺さった針から、眩い閃光が溢れていく。<br />
「君こそ、神に近づく存在なのだから」ヤーマは針を握る手に力を入れる。稲光が、どんどん溢れていく。眩しい！「君の力、あの日に見せてもらった。皆は雷だ雷だって騒いでいたが、私は密かに知っていたのだよ。それは<strong>神の存在と共に封印された概念、禁断の物質『電気』</strong>というやつだ」<br />
秘密の書庫はまばゆい光に包まれていく。<br />
「雷の研究は古来から少しずつされてきていた。私はある泡沫の書物で、雷の性質を知っていた。それは電気と呼ばれるもの。だが、誰もそれ以上は知り得なかった」目もくらむような明るさが辺りに溢れている。「君は、大きな運命を背負っている。そして<strong>この光は未来へと続いている</strong>。さぁ、解き放てよ！」<br />]]>
    </description>
    <category>クエストを探して</category>
    <link>http://questquest.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%A6/55%20-%E3%83%8F%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%81%AE%E9%A4%A8-</link>
    <pubDate>Tue, 15 Mar 2011 14:48:29 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">questquest.blog.shinobi.jp://entry/102</guid>
  </item>
    <item>
    <title>54 [ハコザの館]</title>
    <description>
    <![CDATA[「神は禁じられている」<br />
タイジは確認するようにこの世界での原則を呟いた。<br />
「神は禁じられている。<strong>神の存在は有り得ない</strong>。だとしたら、その<strong>禁忌を作った者こそが神なのではないか</strong>、とね」<br />
「神は自ら自らを否定したのですか？」<br />
「絶対的な存在。我々の世界を<strong>上から眺め下ろしている存在</strong>。そいつがいるんじゃないかっていう疑惑。生物や科学の研究を続けていくと、この世界がいかに見事に構築されているかが分かる。偶然にして出来たという定説を疑わざるを得なくなる。ましてや、<strong>超人や異生物の存在</strong>は特にだ」<br />
「あなたはまたしても答えを言ってませんよ、ヤーマ先生」<br />
「私は！神の存在を疑った！そして、そいつに挑戦をしたかった！<strong>神が超人と異生物を同じ原理で生み出した</strong>のだとしたら、その壁を越えてやりたかった！神の姿を暴いてやりたかった！」魔術大学の生物学者ヤーマはまくし立てた。「隅々まで調べつくし、解明してやりたかった。そして、神なる者が本当にいるのかどうかをつきとめたかったのだ！」<br />
「だからって！なぜ<strong>学生を異生物などにしてしまう</strong>んですか！」<br />
タイジは抗議の仕草をした。<br />
「私が実験をする機会をあの男が与えてくれただけだ。善悪など、大いなる真理の前にはあまりにも儚い」<br />
タイジはその言葉に怒りを覚えた。<br />
「それじゃあ、自分の研究課題の為には生徒の命が犠牲になっても構わないというのですか？あんたも、ハコザと同じ、自分のことしか考えない傲慢者だ！」<br />
「そうだとも！」ヤーマ教授は開き直って言った。「私は狂ってしまったよ。それを弁解もしなければ言い訳もしない。私は神に挑戦したかった。神に近づきたかった。もし、<strong>異生物と超人の融合が成功するならば、人は人の手で命を操作することが出来る！それは神のなしえるワザ</strong>。超人を異生物に変えたのは、ただの一段階に過ぎない。やがては人が超人になるメカニズムや異生物の生態を調べ上げるつもりでいた！それだけのことだ」<br />
「では、あの時&hellip;」思うに、最初にこの人に会った時、あの<strong>暗黒の地下道</strong>の見張り小屋にふいに姿を現した時、その時に気がついておくべきだった。黒幕の存在！「この『祓魔師のチューブ』を使っていたのはあなたなんですね」タイジは金の筒を差し出した。<br />
「そうだ」ヤーマは即答した。「君達は『悲劇の怪人』を倒したが、仮死状態で<strong>超級成分</strong>を抜き取ると、何故か抜け殻の肉体はあのドロドロの怪人になったのだ。私は自分の欲望を止められなかった。己が手で、超人を異生物に転生できる！その恍惚感に&hellip;性に合わないと思いながらも、私は異生物を仕向け<font color="#cc99ff">、ハコザ君の教え子たちと連携しながら、卒業予定の</font>学生達を葬り、異生物に変えていった。大学の教授なんてものは皆、何かにとりつかれた狂人さ。それでも、君は恐れずにここまでやって来た。私の貸した<strong>本に挟んだ栞のメッセージ</strong>の通りにね」<br />
ヤーマはあの時、急いでまとめたいことがあると言って、僕達の元から早々に立ち去った。そのおぞましい研究成果のことだったのか！？<br />
<font color="#cc99ff">「この祓魔師のチューブを使って、あなたは尊厳ある人間の命を、魔術アカデミーの生徒を、マナの級友たちを、おもちゃにして、醜い怪物の姿に変えさせ、同士討ちをさせた！」<br />
「何とでも言いなさい」老教授は居直っていた「私はハコザ教授の腹心の生徒たち四人と共謀し、マナ君たち第一学科生を襲った。みな、事実だよ。私は否定しない。この計画の実行犯として、私は確かに罪を犯した。タイジくん、君に分るか？私の心は、その罪を<strong>少しも悔やんでいない</strong>のだよ。この、どす黒く染まってしまった悪の心は&hellip;&hellip;もう、罪の意識もなく、ただ、己の欲望の充足の為にだけ従順になって、どんな非人道的なことでもやってのけてしまう、腐った心なのだ。だが&hellip;&hellip;<strong>その道具だけは、私がこしらえたものではない</strong>」<br />
「え？」<br />
タイジは右手に握った黄金の筒を今一度見た。<br />
「ハコザ教授でもないよ。アカデミーに出入りしていた&hellip;&hellip;<strong>ある男が我々の元に持ってきた</strong>んだ。</font> それは元々は、消滅時に分泌される<strong>超級成分</strong>を採取していたんだが、途中で思わぬ発見をしてしまっ<font color="#cc99ff">たらしく、彼は『もし関心がおありでしたら、譲ってさしあげます』と言ってきたのさ」ヤーマはタイジに打ち明ける「思えばあの時から、<strong>我々の心はおかしくなっていたのかもしれない</strong>ね。私もハコザも、あの男の金剛石のごとき瞳に見つめられ、心のどこかに泡沫となって抑え込まれていた<strong>邪悪な欲望を、無理矢理引きずり出されたみたい</strong>に、罪を犯してでも、己が願望を叶えたいと、悪事へと走らされた。いやいや、今更他人のせいになどするつもりは毛頭ないが、それでも私はアカデミーに現れた彼と共に、極秘裏に実験を積み重ねていき、その筒の利用法と応用法の研究に没頭していった。超級成分を操作することで、可能になることはあまりに多かった。私はもはや、この罪深き研究に、すっかり魅了されきっていた。今はもう、反省する気すらないよ」<br />
「誰なんですか？それは&hellip;&hellip;一体、何者なんです？」<br />
だが、ヤーマはタイジの問いには答えようとしなかった。人が話しかけるのを、唐突に聞いていないかのような素振りをする。しかも、そこに悪気の風情はない。粘着質の糸がプツリと切れるように、不自然な会話の中断を行う、彼と同じ血液の型の人間に多く見られるコミュニケーションの妙「あの男は、その筒の改造の工程を確か、こう呼んでいたか&hellip;&hellip;錬き&hellip;」</font><br />
その時、天井から大きな爆発音が聞こえてきた。<br />
ドォオン、ドオォオンと立て続けに。<br />
「おやおや、始まったみたいだ」<br />
「一体なんです？」<br />
「君達はハコザを殺した。彼が死ぬと、この館も終わりなんだよ」<br />
「どういうことです？」<br />
「火付虫というのを知ってるかな？地方によっては火打虫とか言ったりするけど」その間にも大きな物音が聞こえてくる。「私はあいつの体にそれを仕込ませておいた。こう見えても生物学が専攻でね。ちょいとあの虫の習性を利用して改造したんだ。火付虫は死ぬと発火するだろう。それを連鎖させるようにしてみたんだ。一匹が火を放つと遠くにいる別の一匹がまた火を放つ。ちょっと扱いづらかったけど、蜀台なんかにセットして部屋中をいっぺんに明るくする仕組みも考案してみた。あ、それでハコザの体には数十匹のそいつを、あいつに気付かれない形で飼わせておいたんだ。知ってるかい？人の体の中には無数の小さき命が共存しているのを。あいつが死んだ時に燃え上がらなかったか？そろそろ連鎖が始まって、館全体にいった頃じゃないかな」<br />
やっぱり人を玩具にしてるだけじゃないか！<br />
「僕は、超人の力でもって、あなたを殺します」<br />
タイジは祓魔師のチューブを床に投げ捨て、弓矢を構えた。<br />]]>
    </description>
    <category>クエストを探して</category>
    <link>http://questquest.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%A6/54%20-%E3%83%8F%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%81%AE%E9%A4%A8-</link>
    <pubDate>Sun, 13 Mar 2011 14:28:17 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">questquest.blog.shinobi.jp://entry/101</guid>
  </item>
    <item>
    <title>53 [ハコザの館]</title>
    <description>
    <![CDATA[<font color="#cc99ff">「どうした？」<br />
大岩のような声で、大岩のような体躯の男ゲンが、怪訝な顔をして獣人族の耳をそばだてているサキィに尋ねた。<br />
「シッ&hellip;&hellip;静かに」<br />
サキィは聴覚を研ぎ澄ます。彼の体に流れる獣の血、それを用いて、聞き取ろうとする。<br />
タイジとマナが、仇敵ハコザを打ち倒したのかも知れない。最初はその音だと思った。ハコザの断末魔が、聞こえただけかもしれないと、思った。<br />
だが、音は止んでいない。とても小さく、連続的に続いている。<br />
これは、何の音だ？あちこちで、まるで火種から火を起こすように&hellip;&hellip;<br />
「ゲン、マコトを起こしてやってくれ」<br />
サキィは判断を下した。きっと、マコトならわかるはず。何が、起こっているのか。この不穏な音の連続は何なのか。<br />
「起きるのか、こいつ&hellip;」<br />
ゲンは自分の肩に乗っけたままの狐人戦士を揺すった。<br />
「そんなんじゃダメだろ！」サキィは思いっきり平手で、ゲンに背負われた少女の尻を叩いてやった。「おら！マコト、起きろ！起きろって」<br />
ペシペシペシペシ。<br />
「ん&hellip;&hellip;ふぁ、ふぁぁい」<br />
狐の尻尾が弱々しく動き始めた。まだ、女っぽさの見受けられない少年風少女は、どうやらサキィのおしりぺんぺんで目を覚ましたようだ。<br />
「マコト！起きたか！おい！この音はなんだ？火の匂いがするような気がするが、小さすぎてよくわからん！お前ならわかるだろ！」</font><br />
<br />
タイジはハコザとの死闘を繰り広げた部屋を出て、同じ階の来る途中にあった扉の破れた部屋に入っていった。<br />
ここで間違いないんだ。サキィのことも気になったが、きっと大丈夫だろう。僕は決着を付けなければならない。<br />
部屋の中は無人で、テーブルに飲みかけの酒と前菜が残されていた。<br />
天井に窪みがあって、床にガラスが散っていたが、最早気にも留めなかった。<br />
タイジは奥の机に向った。<br />
きっと、ここにハコザが座っていたんだろう。右から二つ目の引き出しを開ける。その中に手を差し入れて引金を引いた。<br />
カチっというカラクリの作動する音がした。<br />
タイジは壁を押した。<br />
隠し扉が開いて階段が現れた！<br />
知っていたんだ。<br />
マナにもサキィにも話してはいない。だって、これは僕の問題だもの。ごめんな、二人とも。<br />
タイジは隠されていた扉をくぐった。<br />
二度と帰ってくることは出来ない地の底へと続いているような、暗黒の階段へと、一歩を踏み出す。<br />
二度とは帰って来れない場所へと、彼は歩を進めた。<br />
<br />
<font color="#cc99ff">「頭領！こりゃマズイよ、あっちこっちで&hellip;急がなきゃ、ああ、でも多すぎる！オレたちだけじゃ止められない」<br />
尻を叩かれて意識を取り戻したつぶらな瞳の狐少女は、サキィと同じように獣の耳をすますと、事態を把握して、慌てて言い放った。<br />
「ま、待て、マコト。要領得てない&hellip;&hellip;一体、何が起こってやがるんだ？」<br />
「えぇ？何って&hellip;&hellip;ゲン、お前も聞こえるだろ？」<br />
促がされて大男は「悪いが、俺には二人がさっきから何の話をしてるのか、さっぱりわからないんだが」無愛想な顔で述べた。<br />
「かーーーーーー！」<br />
「マコト、いいか！」サキィは慌てふためく部下の肩に手を置き、真摯な瞳で「俺の知る限り、お前は誰よりも<strong>炎に通じている</strong>。火に詳しく、その揺らめきに誰よりも敏感だ。俺はかすかに、何かが燃えているような気がした。だが、それが何なのか全くわからん。今のところ煙も見当たらない。気のせいかもしれないって考える方が妥当な気さえする。でも、お前ならわかるんじゃないか？この、さっきから続いている変な音も&hellip;」<br />
「頭領、オレだって、こんなのは初めてで、よくわかんないけど&hellip;&hellip;でも、急いだ方が良い！」</font><br />
<br />
タイジは隠し階段をひたすらに下っていく。狭い細い螺旋階段がようやく終わると、あの独特のかびた匂いが漂ってきた。<br />
壁の蝋燭がわずかに灯りを提供している。<br />
そこは書庫だった。<br />
そしてタイジを呼んだ人物が本を読みながら、彼がやって来るのを待っていた。<br />
「遅かったね」<br />
「でも、ちょっとは、あなたにここにいて欲しくないと思っていました」タイジは息を切らせながら返した。「教えてください。答えを」<br />
「<strong>超人と異生物の存在は表裏一体</strong>。どちらも<strong>作られた存在</strong>だ」本を閉じてタイジを見据えながら言葉を繋げる。「このことをずーっと考えていくとね、ある概念が浮かび上がってくるんだ。君も、もしかしたらどこかで聞いたことがあるかもしれないな。そう&hellip;」そこに間を置いて「超越的存在&hellip;<strong>『神』の存在</strong>、をね」<br />
「カミ&hellip;」<br />
あの、どんな精霊よりも気高く、そして絶対的であるとされる、しかし<strong>決して存在はしない</strong>し、信じてはいけないと堅く禁じられている、人間が<strong>陥ってしまう心の病気の一つ</strong>と石版に記されていた、神の存在。<br />
「あなたは神になろうとしたのですか？」タイジは詰め寄った。「人の命を操って！」<br />
「もしかしたらそうかも知れない。あるいは違うかも知れない」俯いて「私はハコザのように、自分の存在をどうにかしたいとかいう野心は持っていない。手を貸したのは、お互いの利益が一致したからに過ぎない。別に、出世や功名心などに興味はない。そんなことはくだらないよ。立場や地位など一時的なものに過ぎない。そんなつまらないことよりも、もっと必死にならなくてはならないことがあるんだ。我々を支配している存在の想起。そう、<strong>神は神を禁じたんだ</strong>」<br />]]>
    </description>
    <category>クエストを探して</category>
    <link>http://questquest.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%A6/53%20-%E3%83%8F%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%81%AE%E9%A4%A8-</link>
    <pubDate>Fri, 11 Mar 2011 14:00:15 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">questquest.blog.shinobi.jp://entry/100</guid>
  </item>
    <item>
    <title>52 [ハコザの館　最上階]</title>
    <description>
    <![CDATA[「やったよ、勝ったんだよ！」<br />
マナの喜ぶ顔がすぐ近くにあって、それを本当にかわいいなって思った瞬間に抱きつかれて「やった！やった！やったー！」ずっとこのままが良いなって思ったんだけど「タイジ！倒した！ひゃっほーい！皆の仇もうてたんだね！」<br />
なんでだろう。<br />
僕にはもう分かっていた。<br />
「グォオオミィがああああ！」<br />
喉を潰されていよいよ怪物みたいな声であいつが叫んでる。<br />
「舐めんなよ！この、私を、よぉおおおおお」ハコザが血走った目でこっちを睨んでいる。喉からドボドボと血を流しながら、片膝をついて起き上がろうとする。「今から、てめぇら二人仲良く、私の魔術でぶっ殺して、やるぅ、からなあ」<br />
「ならもう一回！」<br />
僕の目の前であいつの髪の毛が緑色に変わっていく。<br />
<strong>one more red nightmare!!!!!</strong><br />
マナは再び赤い悪夢を放った。<br />
ダメだ。<br />
チャカのサークレットを装備している以上、ハコザに同じ魔術は二度通じない。<br />
さっきと同じように部屋全体が燃え上がる紅蓮の火炎に包まれたけど「通じないよ！通じないよぉ！もう怖くないよ！フヘヘヘヘ！」血まみれになりながら、へっちゃらだって、言ってるみたい。「さぁ、今度はこっちの番だぜぁ」<br />
「ヤバイよ！タイジぃ」<br />
マナは僕に抱きついた。そうだ、それがずっと続けば良いと思っていたんだ。<br />
「そこまでです！」<br />
部屋の入り口から声があった。<br />
そこに立っていたのは、幾分動きやすくなってるとはいえ、それでも派手な衣服に身を包んだアオイ・トーゲンであった。<br />
「お姉さま！一人でいっちゃうなんて反則です。アオイ、お手伝いしたくって参上しました！」<br />
ハコザは血を滴らせながらゆっくりと後ろを振り返る。ギラリと目が光る。<br />
「ハコザ先生は、すっごいエライエライ人だって有名だし、アオイも尊敬してたんですけど、でもお姉さまの敵となってしまったら仕方ないですよね。お姉さまの敵はアオイの敵ですもん。&nbsp; だから<font color="#cc99ff">&hellip;『呪っちゃいます』</font>」<br />
「ゴミがゴミを呼び寄せたか！お前から先に、消してやろうぅうう」<br />
「アオイちゃん、逃げて！そいつには魔術は効かないの！」ハコザは一度受けた魔術に無敵。「そいつは、一度くらったことのある魔術には無敵になっちゃうんだよー！」<br />
「え、そうなんですか？」アオイは案外キョトンとしていた。「じゃあ、これだったら良いんですね」<br />
僕には、この勝負に間もなく決着がつくことが分かっていた。<br />
アオイの登場は決してデウス・エクス・マキナなどでは無い。<br />
<strong>機械仕掛けの神ならもうとっくに存在していた</strong>からだ。<br />
そして、ハコザの死は既に決定していたんだ。アオイはその死に念を押す為に現れた。<br />
<strong>the blue nile!!!!!</strong><br />
水！水！大水流！<br />
マナが使った<strong>レッドナイトメア</strong>の炎の記憶を沈下させるかのように、今度は大河を思わせる大洪水が室内に巻き起こった。<br />
「お姉さまとアオイだけが知っている、大切な、大切な魔術です」<br />
アオイは迸る水流を両腕から放ちながら、夢見がちの表情で歌うように言葉を紡いだ。<br />
そうだ。マナは思い出した。<br />
アオイのでん部にあったアザ&hellip;タイジの腹部にあったものと色違い。あれを引き出したのは自分。アオイは他の先輩魔術師が誰も知らない水の魔術を会得していたんだ。それをボク以外の誰にも打ち明けなかったのは、この日の為？<br />
ゴボゴボゴボゴボ。<br />
火責めの次は水責め。<br />
ハコザに救いは無かった。「こんな、馬鹿なことが&hellip;あるなんて、認めないぞ！私は&hellip;私は！」<br />
<font color="#cc99ff">「うぎゃ、まだ動けるの&hellip;」<br />
ハコザは体中に幻影術による致命的損傷を幾つも作りながらも、再び細見の剣を握り、三人の少年少女たちに大鷲のような鋭い眼光を投げ掛けた。<br />
「もう&hellip;&hellip;新魔術の御披露目会は&hellip;&hellip;お、わ、り、だああああああ！」やつれた頬で、窪んだ眼窩で、乱れた衣服で、ハコザは叫んだ。狂気の雄叫びを「覚悟しろよお、クソガキぃどもがぁぁぁあ！殺すからな、お前らを、殺すからなァァァ」<br />
「どどどど、どうしよう、タイジ！ボクの<strong>レッドナイトメア</strong>も、アオイちゃんの大水流も、きっとあいつには&hellip;&hellip;もう！」<br />
「心配ありません」<br />
雪原に舞う氷の結晶のような、冷酷な声が聞こえた。タイジは、その時だけ、<strong>意外そうな顔</strong>をして傍らを見やった。そう、ハコザはもう死んでいるはずだった&hellip;&hellip;この時間。だが、何かを終わらせまいとする力か、決して終わらなかった続きを終わらせる為にか、雷と癒しの力を得た少年は、見慣れない光景を、ただぼんやりと俯瞰していた。<br />
アオイがまたしても<strong>聞きなれない何か</strong>を口走った。いつもの魔術詠唱ではない。素人にも、それはわかった。もっと違う、それは<strong>呪いの言葉</strong>だった。<br />
「がぁ&hellip;&hellip;ぁ&hellip;あ&hellip;&hellip;」<br />
ハコザが動きを止めた。<br />
今、再び剣を携えて殺戮の悪鬼と化すかと思われた宿敵は、何も出来ずに、四肢を引き攣らせ、細かく震えている。まるで、先ほどの<strong>レッドナイトメア</strong>で味わった悪夢の続きを見ているかのように&hellip;&hellip;<br />
続き&hellip;&hellip;そう、それは続きだった。<br />
そして、続きは、終わるものであった。<br />
「お姉さま、今こそ、終焉を！」<br />
我々は学んだ。たとえ歴然とした力量差のある難敵相手でも、その動きを止めることが出来れば、勝利は見えてくる。<br />
作戦次第で、一見無理と思われる勝負も、容易にひっくり返すことが出来る。<br />
アオイの口から放たれたのは、そうした類の秘術であった。<br />
魔術ではない。彼女が幼少の頃より嗜んでいて、しばしばマナと近しいと感じられたタイジに対しても行われた、それは<strong>呪詛のスキル</strong>であった。</font><br />
ドブシュ！<br />
最後の一撃はマナが決めた。<br />
<font color="#cc99ff">アオイの呪詛の効果によって身動きが取れなくなった</font>ハコザの剣を奪い、持ち主の心臓目掛けて背後から返してやったのだ。<br />
「あんた、もう類型なんだよ。いかにも悪役って感じの末路、もう終わりだよ」<br />
<font color="#cc99ff">「アァァアアアアアアアアアアアァ&hellip;か、か&hellip;」</font><br />
ハコザの体が薄れていく。やっと、終わるんだ。でも、ここからなんだ。<br />
ヴォっとハコザの体が一瞬燃え上がった。<br />
だが、すぐに炎は消えて、燃えカスの衣服だけになった。<br />
ハコザは消滅した。<br />
身に纏っていたものだけを残して。超人の死は肉体の消滅。衣服はボロボロになって殆ど布切れ状態だったが、チャカのサークレットはカランカランと音を立てて床に転がった。<br />
「終わったよ、カタキ、皆の、取ったんだからね」<br />
マナは剣を握ったまま瞳を潤ませていった。<br />
そこへアオイも抱きつく。<br />
「きゃー！お姉さま、悪を成敗するその姿！アオイをお嫁にしてくらさ～い！」<font color="#cc99ff">先ほど、凍てつく相貌で呪いの言葉を発した際の面影は微塵も残っていなかった。</font><br />
二人の少女が喜びに打ちひしがれながら抱き合って涙している。<br />
タイジはそれを少し離れた位置からまるで遠い過去の思い出を見つめるように傍観していた。<br />
「行かなきゃ」<br />
タイジは改めて<strong>ホワイトライト</strong>を詠唱した。<br />
左肩の傷は先程とは打って変わって迅速な回復力を見せた。<br />
すまんな、マナ。お前の傷も塞いでやることが出来なくて。<font color="#cc99ff">アオイが一緒なら</font>お前はもう大丈夫だよな。僕は行かなきゃならないんだ。マナ、元気でいろよ。<br />
<font color="#cc99ff">「ちょ、ちょっと、どこ行くんですか？」<br />
呼び止めたのはアオイだった。<br />
それはこのシーンから早々に暇を告げようとしていたタイジにとっては甚だ意外な展開だった。<br />
「あれ？タイジっち、別に遠慮しないで、今はボクとハグハグしても良いんだよ？感動補正でちょっとやそっとのタッチなら許してあげるのに&hellip;」<br />
「いや&hellip;&hellip;」タイジは戦場であった部屋の戸口に立ちながら、少し離れた位置にいる二人の少女を眺める。<br />
「アオイも&hellip;&hellip;今だったら、その感動補正で、あなたのこと、少しだけ許しても良いんです」水色の瞳の少女が、こちらを向きながら語る「もちろん！お姉さまを渡すつもりはさらさらありません！いつだって、アオイはお姉さまと一緒なんだから！でも&hellip;&hellip;」小柄な貴族の少女は、初めて見せる表情で「すいません、アオイ、今までかなりヒドイことをしていたと思うんです&hellip;&hellip;お姉さまの、大切って程じゃないけど、そこそこは大事にしてないことも無い、召使いのあなたを、少し、勘違いしていまして&hellip;&hellip;」<br />
「召使いって&hellip;」僕はマナの下僕になったつもりはないぞ。<br />
「だから、お許し下さい！」アオイは改造された博士を突き落として敵もろとも殺害する時のような言い方で、タイジに詫びの言葉を述べた。「アオイ、たくさんの呪詛の言葉を、タイジさんに掛けていました！あの日、初めてアカデミーでお会いした時から&hellip;&hellip;本当の黒幕は、さっき倒したハコザ先生だったのに&hellip;アオイ、勘違いをしてしまい&hellip;&hellip;」<br />
「いいんだよ&hellip;&hellip;それで」<br />
タイジは翳りのある顔を傾け、別れを告げるように言った。<br />
「僕は呪われてもいい&hellip;&hellip;すでに、そうなんだから」<br />
「待って！タイジ！どこへ行くの？」<br />
マナが駆け出す前に、僕に追いつく前に、ここを去らなければいけない。<br />
「マナ&hellip;&hellip;その子を、大事にしてやれよ」<br />
我ながら、馬鹿みたいだった。<br />
生涯をかけて好きだった女の子に言う、最後の言葉がこんな台詞だったことが。</font><br />]]>
    </description>
    <category>クエストを探して</category>
    <link>http://questquest.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%A6/52%20-%E3%83%8F%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%81%AE%E9%A4%A8%E3%80%80%E6%9C%80%E4%B8%8A%E9%9A%8E-</link>
    <pubDate>Sat, 05 Feb 2011 15:18:29 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">questquest.blog.shinobi.jp://entry/99</guid>
  </item>
    <item>
    <title>51 [ハコザの館]</title>
    <description>
    <![CDATA[キィチの言葉に嘘は無かった。<br />
<font color="#cc99ff">少年のような顔立ちからは想像出来ぬほど豪快なマコトの戦斧、長身を生かしたサキィ風を切るような長剣、そして忘れた頃に後方より射出される大男ゲンの大弓。<br />
三重攻撃！<br />
</font>だが、何度攻め入ってもキィチ・ブライ・アンストンズの頑強な剣法の鉄壁は破れなかった。鎧に幾らかの傷をつけることは出来たが、いずれも決定打には達しなかった。サキィの必殺剣『<strong>流星閃</strong>』を以ってしても、結果は同じであった。<br />
「もう、諦めなさい。所詮、ルーツの修得をしていない君たちでは、私の剣に勝ち得ない」<br />
<font color="#cc99ff">サキィもマコトも共に息を切らしながら、老剣士の強かさにたじろいでいた。<br />
攻撃を防がれたほんの一瞬の硬直を狙って、大剣による一撃が繰り出される。<br />
前衛の獣人戦士二人は盾や柔軟な関節を用い、致命傷こそなんとか回避していたが、その四肢には幾つもの刀傷が施されていた。<br />
「君達の動きは手に取るように分かるんだよ。私の兵法書に書かれている通りにね」<br />
「こんな相手、初めてだ」マコトは反撃にあって血の滴る額の汗を拭いながら「オレと頭領の二人掛かりでも崩せないなんて&hellip;」<br />
単純な破壊力では、マコトの斧も決して引けを取らなかっただろう。<br />
だが、周知の通り、斧という武器は剣よりも扱いが難しい。それをマスターしていたとしても、より戦い慣れた相手では、刀剣よりも容易くかわされてしまう。<br />
「さて、終わりが来たようだな、メインストリートのならずものたち。ならずものは所詮ならずもの。しっかりとした理論の後ろ盾無しに、未熟な武芸を晒すだけ生き恥なのだ」<br />
マコトはその言葉を聞いてハッとなった。<br />
つぶらな、丸い眼を見開く。<br />
頭領はオレとの連携を考えた上で動いている。どこかでオレのことを気遣ってしまっている。そんなんじゃない！</font>彼の剣はもっと、自由奔放で、亜人さながらに野性に満ち満ちていた筈だ。<br />
「あんたの戦い方をするんだ！サキィ<font color="#cc99ff">・マチルヤ！」赤髪の少女マコトは、隣に立つ紺の髪の男に呼びかける。<br />
「？」<br />
「頭領！</font>あんたの戦い方は、もっと、型なんてない、無形のものであったはずだ。<font color="#cc99ff">いいか、オレのことなんか忘れるんだ。オレがこれからどんな手段を取ろうと、心を無にして、飢えた野獣のように、あいつを切り伏せることだけ考えるんだ！ゲン！」マコトは同じ年上でも格下扱いをしている弓使いに「お前もだ！分ってるな、最高の一発を、敵に向って撃つんだ」<br />
ゲンは少し離れた位置から、仲間の眼を見つめた。<br />
その少女の瞳には炎が宿っていた。<br />
ゲンは無骨な鉱物のような己が目にそれを映した。<br />
その炎を映した。<br />
獣の血の混じった、まだ若い少年風の少女。彼女の中に秘められたものを&hellip;「わかった」低い声でそう呟くと、射出の準備に取り掛かる。<br />
「何か、策でも思いついたかね？」老騎士は寧ろ、楽しみにするように、それを待ちうけようとする。彼には自信があるのだ。<br />
サキィは二人の共謀の片鱗を悟り「マコト&hellip;まさか！」<br />
「そうだ。心配はいらないよ、頭領、あんたは余計なことなんか考えないで、ただ、切り伏せればいいんだ」<br />
「マコト！」<br />
マコトは再びキィチに挑んでいく！<br />
だが、今までとは違う。<br />
前方から斧を振り下ろしにかかるかと思いきや、手にしたその戦斧を飛ばし、自身は跳躍した。<br />
キィチは一瞬我が眼を疑ったが「武器を捨てるとは、愚かさにも程がある！」飛んできた斧を横様にかわし「ん？なんだ？」私の背後に！？<br />
「さぁ！早く！」オレもこんな真似をするなんてね。<br />
「こら！放さんか」<br />
キィチはもがいた。<br />
自身の背後から、身を封じてきている少女を振りほどこうとした。<br />
狐人の剣士は武器を捨て、今やその少ない背丈を目一杯使い、老剣士の四肢を押さえている。彼女の平たい胸が、ごつごつした鎧に押しあたっている。<br />
「マコト！」<br />
迷いは生じた。躊躇いは訪れた。サキィの腕に、戸惑いという呪いが附着した。<br />
この中央国で出会った、彼女との記憶がフラッシュバックする。<br />
性と精神の入れ違った、無邪気で笑顔のよく似合う斧使いの獣人、マコト。いつしかルロイの元にふらりと現れ、剣士として俺の試験を受け、合格をした、逞しい少女。<br />
「ええぃ、こざかしい奴だ！こんな野蛮な真似を&hellip;&hellip;ぐあぁぁぁ！」<br />
キィチは背後の少女を振り放そうとした。<br />
だが、それは敵わなくなった。<br />
いつの間にか、一本の矢が、鎧の継ぎ目に突き刺さり、つまり彼の腹部から貫通してしまっている。<br />
「んがぁあ！」<br />
敵を両腕で押さえ込んだまま、マコトは吐血する。<br />
ゲンの放った矢は、キィチの腹を越え、背から突き出、自分の肉体にも突き刺さっている。<br />
矢はキィチの鎧を打ち破り、その矢尻はマコトの背から少しだけ顔を覗かしている。<br />
だが、これでいい。二人が串刺しになることで、よりこのジジィを留めておくことが出来る。<br />
「さぁ&hellip;頭領&hellip;&hellip;早く！」<br />
マコトは己が腹部に食い込んだ焼け付く矢の痛みを耐えながら、視線を送った。ゲンのやつ、マジで容赦がない。本気で打ち込みやがった&hellip;<br />
「こんな型破りな！」さすがのキィチも、焦慮を見せ始める。<br />
依然、身の自由は利かない。口もとから鮮血が零れ出す。<br />
サキィは迷ってはいけないと悟った。<br />
今、キィチの体を後方から羽交い絞めにして押さえているマコトを、切り伏せてしまったとしても！</font><br />
そうだ、そもそも俺の戦い方に型なんて無かった。<br />
俺は、まず疑う。<br />
その既に作られて人々に信仰されているものが、果たして本当に尊いものであるかどうか。<br />
ただ単に、体制に逆らおうとする態度は、崇高であっても危険だ。相手を疑い、大切なのは、<strong>自分がどうするか</strong>、ということ。<br />
自分ならどうするかということ。<br />
キィチ、お前は自信満々に己が剣を疑っていない。そこに、弱さがある。そこに真実が隠されてしまっている。<br />
サキィは飛び込む！<br />
だが、その剣の構えはかつて無い奇妙さだった！<br />
腕をブンブンと振り回し、刃を旋回させる。<br />
<strong>流星閃</strong>を繰り出す要領で、回転する刃先に<strong>超人の思念</strong>を送り込んでいく。<br />
<font color="#cc99ff">もはや、彼は何も考えなかった。<br />
無我の境地！<br />
マコトの犠牲も、自分の腕のことも。<br />
ただ、目の前の敵を葬ることだけを考えていた！<br />
「そうだ&hellip;それでいいんです」<br />
マコトはキィチを掴む腕に力をこめる。腹から血が流れるのを感じる。<br />
「なんだと！？仲間を？」<br />
キィチは身動きを封じている背後の少女を咄嗟に振り返った。<br />
狐の剣士は少年のようにあどけなく、穏やかに、笑っていた。こんな展開は私の辞書に無い！<br />
眼前から迫ってくる、迫ってくる、迫ってくる、長い髪の、長身の、亜人の剣士が！<br />
無茶苦茶に腕を振り回し、剣を振り回し、野蛮と未開と無智の権化となって、迫ってくる！<br />
「<strong>風車斬</strong>！」<br />
否。<br />
それはただの蛮行ではなかった。<br />
愚かさを纏いながらも、同時に<strong>築き上げられたマンネリを破壊する為にどうしたらいいか、その点を自覚している、賢き反逆</strong>であった！<br />
サキィは体に流れる獣の血を目一杯たぎらせ、渾身の一撃をぶちかます。<br />
そこに迷いは無い。<br />
もし、俺がお前と同じ行動を取ったら、俺はお前と同じことを望むだろう。<br />
己の身を挺してでも、勝利の為に、そいつもろとも斬られることを望むだろう。<br />
躊躇なんてして欲しくないと！<br />
仲間を守って死ねるなら、本望だと！</font><br />
マママママママママィイジェジェジェジェネレイショォォオオオン<br />
誰も予想しなかった。<br />
獣人の剣士サキィは、伝説の老騎士をたった一撃で破ってしまった！<br />
風車のように旋回させた彼の剣から巻き起こった突風が、竜巻となって辺りに荒れ狂い、激しい衝撃音と共に、キィチの鎧は粉々に飛び散り、館の二階部分を陥没させるほどの凄まじい破壊力でもって、宿敵を仕留めた。<br />
振り回したサキィの剣から生じた暴風が、辺りを掻き乱し、遠巻きに死闘の行方を見守っていた人々をも薙ぎ倒していった。<br />
<font color="#cc99ff">サキィの剣&hellip;生家の鍛冶屋を捨て去る時、託された特注の剣は、その時、初めて誕生したのである。<br />
柄に施された風車は、産声を上げるように、<strong>旋回</strong>していた。<br />
</font>荒れ狂う嵐が、剣から生まれ、戦場を混沌の坩堝と変えた。<br />
「どぅおおおおおおおおおおおおおでぃあどくたあああああ」<br />
キィチ・ブライ・アンストンズの体は弾き飛ばされ、転がる石のように四方にその欠片が舞った。<br />
そして消滅する。<br />
戦いは終わった。<br />
<font color="#cc99ff">後は巻き起こった風の精霊が、まるで鎮魂歌を奏でるように、しばしの間、大広間に吹き荒れていたが、それも徐々に弱まっていく。<br />
風は弱まり、そしてまき散らした大小のものを再び地面に降ろし、辺りを静けさの妖精に明け渡す。<br />
しかし、マコトの姿は無い。<br />
「マコトーーーーーーーーーーーーーー！！！」<br />
塵と埃が細かく舞う中、サキィは涙を流していた。<br />
床に膝を着いて、鋭い獣の牙を覗かせる口を大きく開けて、むせび泣いていた。<br />
お前を斬ってしまった！<br />
殺してしまった！<br />
まだ俺よりも全然若い、お前を&hellip;&hellip;俺は&hellip;<br />
「残念だが&hellip;&hellip;」地の底から響いてくるかのような声で「こいつは生き残っちまったぜ」大男のゲンが近づいてきた。<br />
マコトは生きていた！<br />
ゲンの大きな肩に担がれ、意識を失っているが、その身は消滅してはいない。<br />
尻から伸びた狐の尻尾がしなだれている。<br />
「さすがだよ。あそこで躊躇いなく斬れるなんて&hellip;あんたはホントに立派な騎士だ」<br />
サキィはぐしゃぐしゃの顔を拭いながら「マコトだから&hellip;出来たん&hellip;だ」<br />
「それで良い。こいつの行動が無駄にならなくて済んだ」ゲンは仏頂面のまま、男泣きを見せた上司に向って「それが正しい。戦いとは非情なものということをちゃんとわきまえてる。だから俺も、この仕事を続けていられる。ここにいたいと思う」<br />
「ゲン&hellip;」<br />
サキィは感無量だった。<br />
共に腕を磨き、共に目的を同じくし、共に助け合い、成長しあう。<br />
仲間ッ！そう、かけがえの無い、<strong>信頼の絆で結ばれた仲間</strong>。<br />
あそこで少しでもマコトの身を案じて剣を緩めたら、それは信頼ではなかっただろう。お互いが、お互いの技量を信じていたから、ああした行動が取れた。<br />
<strong>俺にはもう、立派な仲間がいる</strong>。<br />
「すまなかった&hellip;&hellip;お前たちに黙って、俺一人がこんな勝手な戦を&hellip;&hellip;無責任だった&hellip;&hellip;」<br />
サキィの懺悔の言葉を、獣人の少女を肩にしょったまま、ゲンは黙って聞き入れた。沈黙こそ、彼の赦しであった。ふと、彼が館の壁に開けた大穴から夜風が吹き込み、彼の剛毛を揺らした。<br />
「なぁ、ゲン、俺、この戦いが終わったら、ルロイの言ってた通り、<strong>ちゃんと名前を決めようと思う</strong>んだ。俺らのカンパニーのさ」<br />
狐族の少女を担いだままの大男は、僅かな笑みを作って返した。<br />
「そういうのは、ちゃんと戦いが済んでから、言うもんだ」</font><br />]]>
    </description>
    <category>クエストを探して</category>
    <link>http://questquest.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%A6/51%20-%E3%83%8F%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%81%AE%E9%A4%A8-</link>
    <pubDate>Sun, 30 Jan 2011 16:00:00 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">questquest.blog.shinobi.jp://entry/98</guid>
  </item>
    <item>
    <title>50 [ハコザの館]</title>
    <description>
    <![CDATA[何故！これほどにも！苦しいのだ！<br />
炎が、揺らめいている。恐ろしい。<br />
恐ろしいだって？<br />
この、私が！たかだかボヤごときを！<br />
<font color="#cc99ff">クソッ！クソォ！クソオオオ！<br />
あの、死にぞこないの老いぼれめ！<br />
私に、教えなかった切り札を&hellip;こんなところで&hellip;しかも、あいつの飼い犬に使わせやがったァ！！<br />
私を、見下して！私を&hellip;&hellip;<br />
燃えていく。<br />
燃えていく。</font><br />
<font color="#cc99ff">まるで怨霊の群のように、どす黒い色彩を有した炎がゆらゆらゆらゆら辺り一体を包み込み、彼の肉体を溶解しようとしている。<br />
逃げ場はない！<br />
どっちを向いても炎。どっちを向いても灼熱。どこまでいっても炎。どっちを向いても灼熱。<br />
否、そは煉獄なり！<br />
恐るべきは、この秘められたる魔術、<strong>レッドナイトメア</strong>。<br />
悪夢を孕みながら、ハコザ教授の四肢を焼け付かせ、墨屑へと変えさせていく。</font><br />
ハコザは暑さと<strong>精神に訴えてくるダメージ</strong>から逃れようと、必死に思考を賭け巡らせた。<br />
辿り着いたのは、彼の少年期。<br />
そうだ。<br />
私はこの炎を知っているんだ。<br />
一度、この炎を見ていた。<br />
私の家&hellip;。燃えて、無くなってしまった、私の家。<br />
ハコザは幼い頃に生家で起こった火事のことを思い出していた。<br />
夜中に突然目が覚めると、家の中が煙で満たされていた。真っ暗の筈なのに、廊下が明るい。ベッドから這い出て父と母の名を呼んだ。応えは無く、外からは悲鳴や怒声が聞こえて来ていた。真夜中だった。真夜中には許されていない筈の明るさがあった。初めて自分の家が燃えているのだということを知った。父親が自分の名を叫びながら飛び込んで来た。いつも頭を殴ってくる大嫌いな父親が。何をボサっとしている！早く、逃げるんだ！どうして？幼いハコザには分からなかった。火事で、もうすぐこの家は消滅してしまう、事態の予測にすぐには辿り着かなかった。父親は自分の手を強く引っ張った。痛い！腕が千切れる！何してるんだ、さあ逃げるんだ。やだよ、僕の本や玩具はどうなるの？馬鹿なことを言うな！そんなものどうだっていいだろ！<strong>命が一番大切なんだ</strong>&hellip;&hellip;！<br />
私は、忘れてはいない。<br />
あの苦しみの日々を。<br />
決して豊かであったとはいえない田舎の私の家庭は、突然の火事によって完全に破滅してしまった。<br />
父親は失業し、母は貧しさに耐え切れなくなってどこへともなく出奔してしまった。<br />
死人が出なくて本当に良かったなどと村人は人事のようにほざいたが、私としては、いっそ火事で一家全滅になっていた方が良かった。<br />
なまじ生き残ってしまったが為に、その後の人生がどれほど辛く苦しいものになってしまったことか。<br />
父親はますます暴力を振るうようになり、知人の情けで貸してもらった小さな一室で、私は来る日も来る日も苦しみに耐えていた。<br />
貧しさにではない。<br />
私が何より耐えがたかったのは、学校や村人達の私達親子に対する態度だ！<br />
あの<strong>哀れむような視線</strong>。この子は家が焼けちゃって大変なのよね。お気の毒に。がんばりなさいよ。<br />
あの態度！全く我慢出来なかった。<br />
ある日口を聞いたことも無いクラスのませた女が「良かったら」といって贈り物をしてきた。私はそれを黙って受け取ると、中身を調べずに帰り道のドブ川に投げ捨てた。<br />
あいつらの！「めぐんでやるよ」という、まるで自分よりも遥かに劣る弱者を見下すような目つきが、私に与えた苦痛は決して忘れられるものではない。<br />
私は誰よりも上に立つ男になることを欲した。<br />
貴様らに、知らしめてやる。<br />
貴様らが見下している私は、やがてお前たちの遥か頭上に君臨する者なのだということを！<br />
そして、私はいつしか<strong>超人の力</strong>を手にしていた。<br />
その日、私はあらゆる精霊に感謝の祈りを捧げた。<br />
だが、何故、今そんなことを思い出しているんだ？<br />
「タイジ！」<br />
マナが駆け寄ってくる。<br />
「タイジ、タイジ！ゴメンね、ボク、なんだか急に眠くなっちゃって&hellip;でも今度は、タイジが起こしてくれたんだよね？」<br />
「マナ、そんなことより、ハコザの奴だ。あいつ、頭を押さえたまま苦しんでるみたいだけど」<br />
「あいつはしばらくは動けないよ」マナは自信を込めて言う。「学長のおかげだよ。それより、今がチャンスなんだ。タイジ、矢であいつを仕留めるんだ」<br />
確かに、今のハコザは隙だらけだ。<br />
だけど、ハコザの必殺剣で受けた腕の傷の回復は、矢を放てる段階まで進行していなかった。兄さん、あんたの魔術は役に立っていないよ<font color="#cc99ff">！<br />
「マナ&hellip;&hellip;駄目なんだ、腕が&hellip;&hellip;僕の腕で、この弓を握れない」<br />
タイジは千載一遇のチャンスを前にして、額から止めどなく流れてくる汗を拭うことすら出来なかった。<br />
もちろん、彼が開発し、ようやく製品化の段階へとこぎつけた医療薬も、傷口への使用を試みてはいた。だが、その結果は彼の十八番の回復系呪文<strong>ホワイトライト</strong>と同様であった。<br />
傷は癒えても、完治までは至らない。<br />
ハコザが鋭い懸声と共に放った剣の奥儀『</font><strong><font color="#cc99ff">月光衝</font></strong><font color="#cc99ff">』によって粉砕された肩のせいか、それとも、もっと<strong>付加的な効果</strong>のせいか、片腕は運動をすることを激しく拒絶し、彼に再び武具を構えさせることを断じて許さなかった。<br />
破壊力&hellip;肉体へのダメージ度はもちろん、今までに味わったことないほどそれはそれは甚大だった。<br />
だが、それに加え、まるで武道に於ける『小手打ち』のような、相手の戦力を削ぐ相乗効果。<br />
タイジは焦燥する。<br />
せっかく、マナの極秘の魔術で動きを止められているのに、僕の腕は、動くことを否定している。また、戦うことから逃れようとしている！<br />
今、ここで！<br />
弓を構えて、あいつを殺さなければいけないのに！<br />
どうして、お前は&hellip;ッ！</font><br />
「ボクが手伝うよ」<br />
<font color="#cc99ff">「&hellip;マ、マナ？」<br />
少女の、優しい匂いと強い言葉が傍らにあった。<br />
「いっしょに&hellip;&hellip;あいつを、殺そう」<br />
タイジは唇を噛んで、顔を背けたまま、何かをひとしきりこらえた後「うん。ありがとう」</font><br />
マナはタイジを抱いて起こしてやると、弓を右手で掴み、矢をタイジの背から抜き取って彼のまだ使える方の手に握らせた。<br />
「さぁ、ボクが弓を持ってるから、矢を放つんだ。とびっきり痺れるやつをね！」<br />
マナが肌をぴったりと合わせてくれている。<br />
迷うことは何もなかった。<br />
仮初にもマナと一つになれている気がした。<br />
理性を失った<strong>異生物</strong>の中でではない。<br />
お互い赤い血を流しながら、それでも人間としての歴然とした明確な意志をもって、心と体がぎこちなくも一つになっている。<br />
マナの構える弓にはマナの魔術の力が。<br />
タイジの指に挟まれた矢には雷の力が。<br />
そして二つが一つになって、仇敵に向って、放たれる。<br />
ェッェエエエエエエクススプェエエリエエエエエンンンススゥゥゥウウウ<br />
激しい閃光がハコザ目掛けて突き抜けていった。<br />
やがて、それは男の喉仏に深々と命中した。<br />
ハコザは声も上げずに、うつ伏せに倒れ伏した。<br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>クエストを探して</category>
    <link>http://questquest.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%A6/50%20-%E3%83%8F%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%81%AE%E9%A4%A8-</link>
    <pubDate>Mon, 24 Jan 2011 15:10:20 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">questquest.blog.shinobi.jp://entry/97</guid>
  </item>
    <item>
    <title>49 [ハコザの館　最上階]</title>
    <description>
    <![CDATA[「どぐさ&hellip;&hellip;だと&hellip;&hellip;？」<br />
ハコザは顔を引きつらせた。<br />
背中に異物感。手を回してみる。<br />
タイジが操っていたのは四本だけではなかった。<br />
最初に放っていた威嚇射撃のそれも密かに帯電させてあったのだ！ハコザの剣で叩き落されては宿した電気の力も消えてしまう。だが、わざとハコザを外して撃ち放っていた幾つかの矢をハコザに気付かれないように彼の背後から再び飛ばしたのである。「くらえよ、みんなの、 怒りだ」タイジは指先に力を篭めていく。ハコザの体がパチパチと爆ぜていく。<br />
「私の&hellip;背中に、あの小僧の&hellip;？」<br />
信じられない。いや、彼は信じたくなかった。年齢も経験もまだまだ青二才のガキ如きに、このハコザ教授が手傷を負うなんて&hellip;。<br />
「冷静にぃ！死ねよぉぉお！」<br />
いつも威張り散らしてる高圧的な人物ほど、傷つけられた時の取り乱しようったらない。<br />
ハコザは一気に頭に血が昇り、即座に自分に楯突いた愚かな相手に対し報復の剣術を放つ。<br />
「死ねぇぇっぇぇええええ！<strong><font color="#cc99ff">月光衝</font></strong>！」<br />
ハコザは剣を真っ直ぐに相手に照準を合わし、そして猛スピードで突きを放った。<br />
一瞬だった。<br />
ハコザは弾丸のように突進し、タイジは横にかわそうとしたが間に合わず、左の肩に剣が命中した。<br />
「ぅわわぁぁぁぁあああああ」<br />
タイジは大きく吹き飛ばされた。床に転がる。立ち上がれない。左肩が焼けるようだ。肩を押さえてみる。<br />
そこに、ある筈のものがなかった。<br />
肩甲骨が吹き飛んでいる！<br />
「ゎ！ぅわ！」だから、家の中でどこにも出かけずじっとしていた方が良かったんだ。「うわああああああああ」今やタイジの左腕は薄い皮一枚で胴体と繋がれている状態だった。い、痛い！痛すぎる&hellip;！そうだ、は、はやく、治療を！た、助けて、肩が&hellip;取れちゃう、早く、なんとかして、兄さん、痛いよ、早く！<br />
<strong>white light white heat!!!</strong><br />
タイジは右手で負傷した左肩を押さえ、白い光でその部分を急速に活性化させていく。活性化させていく幻を細胞に送り込む。細胞は<strong>ホワイトライト</strong>の力を得て分離した肉と肉を結び付けていく。<br />
「はぁはぁ、まだ、まだまだだよ。タイジ君」ハコザはだらりと剣を手にしたままゆっくりと舐め回すように言った。汗ばんだ髪が垂れている。「まだね、君の肉体が傷ついても、それはまだまだ」手を髪にあてて、ゆっくりと後ろにすいた。「<font color="#cc99ff">そうだ&hellip;今のうちに&hellip;&hellip;<strong>ホワイトライト</strong>で回復をしておきなさい。さっきの一撃で、君の体力は瀕死の状態になってしまっただろうから、今のうちに、少しでも傷を癒しておきなさい。でないと、これから&hellip;堪えられないから、まだまだ、私の怒りの分は、こんなもんじゃ&hellip;足りないからさ&hellip;&hellip;そう、</font>まだ、君によって傷つけられた私の心の分が残っているよね」ニヤリとタイジにおぞましい笑みを見せる。「ゴミ同然の君によって傷つけられた、私の心の傷の分が！残っているよね！」<br />
ハコザは倒れていたマナを左手で掴み上げた。<br />
「やめろ！」何をする、とは言わなかった。タイジにはもう分かっていたからだ。ハコザがこれからしようとしていることを。<br />
「物分り良いよね、君って。まるで、最初から諦めているような&hellip;君の目。時々、好きになりそうだよ。良いよ、その諦めたいと願ってる冷めた瞳。すべてを投げ出したくてイライラしてる、その目つき。私に、黙って、諦めて従えばいいのに」ハコザは汗で顔中を濡らしながらも楽しそうに言葉を紡ぐ。「君の目の前でこの愛しのガールフレンドを八つ裂きにしようと思うんだ。それってちょっとステキだろ？」<br />
「やめろ！やめろー！」タイジは悶える。まだ肩の傷は癒えない。傷が深すぎるのか、<strong>ホワイトライト</strong>の進行が遅い！なんだ、超人になったからって、この痛みは！痛いじゃないか！歩けないじゃないか！<br />
<font color="#cc99ff">左腕の感覚など、とっくの昔に忘れ去られてしまったように消滅していて、裂傷は肩部分なのに、体中がズキズキと痛みで悲鳴を上げている！</font><br />
「この子さ、ちょっと顔は良いけど、わがままに育ったせいか、お世辞にも細いとは言えないよね」ハコザは意識の無いマナの顔をじろじろ眺めながら言う。「私はね、女性はやはり細くスラっとしてる方が美しいと思うんだよ」ハコザの女性論。とある世界では一般的となっている女性論。「足はゴボウのように細く！腰をギューッと引き締めて、だね。うん。そっちの方が良いじゃないか」ハコザは語る。「だって、そうした<strong>不健康な姿なら言いなりにし易いだろ？痩せていて美しいというのはつまり、我々男の道具として扱いやすいという意味</strong>なんだよ。ポキっと折れてしまいそうな<strong>細身の四肢を見れば、男なら誰しもこの女を自分の意のままに出来るだろうと欲望できる</strong>。欲情する！己が意のままに、服従させる！逆らえば骨を折ってやればいい。その為には細い手足だ。余計な贅肉などあってはならない。いつでも<strong>男の道具になるためにダイエット</strong>なのだ！」ハコザは真剣な表情で語る。<br />
「マナを&hellip;放せ」魔術を施している筈の肩の痛みはあまりにひどく、意識を集中させていないとふらっと気絶してしまいそうだ。最早大声も出せない。<font color="#cc99ff">初めて体験した<strong>『</strong></font><strong><font color="#cc99ff">月光衝</font></strong><font color="#cc99ff"><strong>』</strong>という</font><strong><font color="#cc99ff">剣術</font></strong>から受けた傷が故か。<br />
「それが！この女はなんだ！マナ・アンデン！ぶくぶくと男を小馬鹿にするように太りやがって！どうせ君もこの女の尻にしかれているんだろう」マナは一向に目覚めない。「でも、この女をこの剣で切り刻めば、まるで上等の霜降り肉を包丁でさばいていくように、たっぷりとした肉と血が豊満に溢れて、舌なめずり、舌なめずり、舌なめずり、舌なめずり、ウマーーーー！それはそれは楽しそうだとは思わないか？」<br />
「マナ&hellip;目を覚ませ」<br />
こんな時に寝てるなよ！くそ、意識をずらすと傷口の痛みが一気に襲ってくる。<font color="#cc99ff">死の匂いを漂わせる、何かが閉鎖的に封殺されていくような、</font>超越的な痛みが！<br />
「せっかくだから服を剥いでから始めたほうが良いかな？」ハコザは残酷な笑みを見せびらかす。「新鮮な女の肉というものはなかなか良いもんだぞ？うちの大学でも、以前文学部で修士号もとった西南幕府の留学生が別の留学生を銃器で殺害し、その肉を喰らったことがあった。あの学生の名前、何て言ったかな？確か、サワガ&hellip;いや、ワガサ&hellip;なんだったけな？君、知らんかな？」誕生日の贈り物を待ち望む無垢な子供のような面持ちで「さ、そろそろ始めようかな。あんまりこいつを持ち上げていると腕が疲れるよ。豚め」<br />
「マナ！起きろ！」<br />
叫ぶほどに痛みは増していく。<br />
治療呪文<strong>ホワイトライト</strong>の術を止めて下手に動けば左腕がもげてしまう！だが、その前にマナが、あいつの剣でバラバラにされてしまう！<br />
そんなの嫌だ。ずっと、ずっとマナに会いたかったんだ。目を覚ましてくれよ。せめて、歩けなくてもここから何か&hellip;出来ないのか？<br />
「そうそう、君は知る由もないだろうが、このマナ・アンデン&hellip;アンデン姓は母親のものだが、<font color="#cc99ff">コイツの本当の出自には、もっと多くの謎と影の歴史が秘められている。そのことを知っているのは、ごくごく少数&hellip;」<br />
「なんだって？」タイジは必死の状態で苦渋の表情を作りながらも、ハコザが戯れに語りだしたマナの秘密の件に「どういうことだ？まさか&hellip;&hellip;」<br />
あの日。あの夜。<br />
タイジは卒業式の祝いの席の後、マナの母と長い昔話をし、おやすみを言う間際に、彼女の会話を遮った。ぼんやりと、その中身を悟っていた。だから、敢えて、話を聞くまいと、彼女に話させまいと、彼は無意識にそうしたのかもしれない。<br />
マナの出生の秘密を&hellip;&hellip;！<br />
マナの母親、ユナ・アンデンは、あの時タイジに、こう言おうとしたのだろう。<br />
「<strong>この女の今の母親は、本当の母親ではない</strong>」<br />
マナはユナの子ではない！<br />
だが、何故かしら、タイジにはその事実への予感があった。理由は無い、漠然と、どこかで、それを悟っていたのである。<br />
「そして、こいつの実の父親である、死んだあの男は&hellip;&hellip;」だが、ハコザは思い直したように「ふん、まあ、それはどうでもいい。君に話したところで、どうせ君もすぐにこの女と同じ、あの世へと旅立つのだからな。どの道&hellip;</font>この腐った血統は断ち切っておかなければね。来るべき超人達による理想の世界のためにも」<br />
「起きるんだ！マナ！」<br />
「起きないよ。こいつは。だって強烈な眠り薬で眠ってるんだもん。今頃たらふくご馳走でも食べてる夢でも見ているんだろうよ。おっと、夢なんて見れる浅い眠りじゃなかったな。さてさて、まずは一刺し」ハコザは剣をマナの右肩に突き刺した。「君がケガしてるのと反対側の部分だよ<br />
」細身の剣はそのままマナの柔らかい肉の壁を貫通して背中側に顔を出した。<br />
赤い雫が剣身を伝って落ちる。マナはそれでも目を覚まさない。<br />
「くっそ」<br />
なんとか、ならないのか？左腕が千切れてしまいそうだ。だが、そうしないとマナが、殺されてしまう。ここからでも出来ることは？そうだ、魔術。いや、あいつに魔術は効かないんだ。じゃあ&hellip;じゃあ&hellip;<br />
「どれどれ、じゃあ右腕を切り落としてみようかな」ハコザは下品に笑った。<br />
起きろよ！マナ！<br />
瞬間、タイジの頭の中でまた旋律と文字が浮かび上がった。マナ、起きろ！そう言ったつもりだった。<br />
<strong>in the purple rain!!!</strong><br />
プリリィィイイイイィィンンンンスっと、鋭く電磁波が駆け巡った。<br />
マナの体が一瞬弾いて光ったように見えた？<br />
「なんだ？」<br />
ハコザも怪訝な顔をしている。まさか、またしても新魔術か？だが、私にダメージはないようだぞ？一体なんだ、不発の稲妻か何かか？<br />
「ありがとうタイジ」<br />
マナが目を覚ましていた！<br />
「そして香水臭いキザなおっさん。何してんの？あんた？」<br />
マナは寝込みに痴漢をされたような面持ちで言った。肩に剣が突き刺さっている。至近距離にハコザの角ばった顔がある。<br />
「な」起きるはずが無い！何故だ！自然に&hellip;いや、違う。あの小僧がさっき一瞬、何かをしたように見えた。それか？「だが、私にお前の魔術など効かないぞ！」ハコザは動転していた。<br />
「知ってるもん」マナはまだちょっと半開きの目で告げた。「ハコザ教授は大学で教えてるすべての魔術に対し無敵&hellip;噂好きの学生だったらそんぐらい皆知ってる」<br />
「そうだ！その通りだ！私は魔術を凌駕している！魔術を統べる者だからだ！この、<strong>チャカのサークレット</strong>がある限り」<br />
あの時、虎の腹に仕込ませておいた金の環。<br />
それを装備した状態で受けた魔術に対し、絶対的な免疫力を獲得することが出来る、精霊の力が宿った装飾具。<br />
「そんなん知らないけど&hellip;でもね、ボクの魔術じゃないんだよねー」マナは詠唱を始める。左手で剣を掴みながら。まるでハコザを放さないように。「確実に、お前に当たるように、やってやるさ」<br />
ボクは、学長直々の指導の下、血の滲むような思いをしてハコザを倒す為の切り札ともいえる魔術を習得した。<br />
「魔術なんぞ、私には効かないんだぞ！」<br />
ハコザは剣を更に押し込めた。マナの肩から血が吹きだす。<br />
「効くさ。だって、お前はこの魔術、知るわけがないんだから」<br />
そう。<br />
学長だけが会得している禁断の魔術。あの人はそれをボクに教えてくれた。とても危険な代物だと何度も言った。それでもいい。仇を討つ為に、ボクはそれを覚えなければならなかった。そして何度も失敗しながら、ボクはこの秘密の魔術を覚えた。<br />
マナは体に突き刺さったままのハコザの剣を掴みながら一気に力を集束させていく。思い描くんだ。友達がいっぺんに死んでいった光景を。こいつに殺されていったクラスメイトのことを。死んでいく人々を。お父さんの死を！黒く塗りつぶされた未来を！悪夢を、見せてやる。消えうせることのない永遠の業火で大切なものが何もかも燃やされていく様を！髪は燃えるような緑！<br />
<strong>one more red nightmare!!!!!</strong><br />
タイジは左肩をおさえて床にうずくまりながら、マナの体から鬼火が吹きだしていくのを見た。<br />
<strong>レッドホット</strong>とは全く違う！<br />
同じ炎といえど、あまりにもおどろおどろしく、地獄の精霊が現れたように物々しく気味の悪い燃え上がり方。<br />
人は火を見て想うことがある。人類がその進化の功績として生み出した、炎。恋人同士の語り合いを彩ることもあれば、清らかな祈りの道具として用いられることもある。命を全うした人の亡骸を灰にする為に灯されることもある。だが、時に凶悪で残忍な破壊者にもそれはなる。<br />
燃やされていく。<br />
気がつけば戦場となっている部屋は赤一色に染まっていた。部屋が歪んでいく。壁が、ドロドロに溶けていく。熱い、熱い、煙が巻き起こって息が詰まる。メラメラと揺らめく業火は罪人を火刑にする時の炎のよう。<br />
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁああ」<br />
魔術の攻撃対象では無いタイジですら、現実のものと錯覚したほどの強迫力に包まれていたのだから、ハコザが体験した苦しみは並大抵のものではなかった。<br />
彼は剣を手放し、両手で頭を押さえた。<br />
「うわああ！うわあああ！！！ぎゃああああ！！！」<br />
サークレット、何故力を発揮しない！苦しい！燃えていく！私の体が、燃えて、跡形もなく、灰に！<br />
「最高にイカした学長だけが知っているもう一つの炎の魔術。<strong>レッドナイトメア</strong>」マナは肩に刺さった剣を引き抜きながら「優しい火の玉ボールとはわけが違うんだよ。火遊びをしてて、間違って何かを燃やしちゃったことってある？大切なものが燃えていってしまうあの時の感じ。なんか、火ってすごい人間の側にあって、色々考えさせられるよね。放火魔とかさ、きっとすんごい原始的なとこからくる欲望なんじゃないかな。<strong>物が燃えるのって、なんか恐い</strong>よね。燃えていくのって、ただ壊したり、千切ったりするよりも、もっと、恐いよね。あんたも、地獄を味わいな」<br />
燃えていく！燃えていってしまう！私の！私の積み上げてきた総てが！！<br />
<br />
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    </description>
    <category>クエストを探して</category>
    <link>http://questquest.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%A6/49%20-%E3%83%8F%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%81%AE%E9%A4%A8%E3%80%80%E6%9C%80%E4%B8%8A%E9%9A%8E-</link>
    <pubDate>Thu, 20 Jan 2011 12:18:18 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>48 [ハコザの館　最上階]</title>
    <description>
    <![CDATA[タイジは煙に包まれたマナを案じた。<br />
毒ガスか？怪しげな術の一つなのか？この煙は一体&hellip;。<br />
危険かも知れない。<br />
もうあの異生物の気配は完全に消えたと思われるが、迂闊にこの中に入っていくのも憚れる。でも、助けに行かなければ！幾ら呼びかけても返事が返ってこないことに業を煮やしたタイジが、一歩を思い切って踏み出そうとしたその矢先。<br />
バリィィイインと窓が割れた！<br />
国立魔術大学魔術学部副学部長、ハコザ博士の登場である！<br />
窓の外、夜の帳の彼方から、ガラスを破って！タイジのすぐ目の前に、飛び込んで来た。「くゎ！」まずい！間合いが近すぎる。<br />
「お見事だよ、タイジ君」<br />
ハコザがそこにいた。<br />
鴉を思わせる黒装束と狡猾な顔立ち。頭には金のサークレットをはめており、額の位置に埋め込まれた銀色の宝玉が陰険な光を放った。ハコザに近づくと僅かに香水の香りがした。それを感知するよりも早く、抜き放った細身の剣の刃が迫ってきた。<br />
タイジは上体を逸らして剣をかわした。間合いを、取らなければ！ハコザと戦う覚悟は出来ていたとはいえ、まさか魔術ではなく剣で攻めてくるとは！<br />
「ほれ！どうした！ん？」<br />
ハコザはニヤつきながら細身の剣で突いてくる。<br />
昔、針のお化けに襲われる夢を見た。何本もの太い針に串刺しにされる。体が穴だらけになって&hellip;とても恐い夢だった。今がそれだ！タイジはなんとしても距離を取ろうと攻撃をかわし続ける。<br />
「ホレ！ホレ！どうした、どうしたー？ん？」ハコザは楽しんでいる。格好の獲物を見つけて、時間を掛けたっぷりといたぶってやろうという魂胆。「魔術学史に名前を残す偉大な魔術師のタイジ君？<font color="#cc99ff">医学の歴史に革命的な発明者の名を点じたタイジ君？</font>どうした？遠くからじゃないと戦えないのかね？あーん？」<br />
防戦一方では不利になるばかり。<br />
タイジは背に装着していた盾を手にとって、ハコザの剣を受け流そうとした。しかし、それは叶わず、ハコザの剣はタイジの軽量の盾を突き抜けて彼の腕に赤い筋を作った。<br />
痛い！血が！<br />
だが、一瞬のチャンスでもあった。ハコザの細身の剣は盾に突き刺さっている。ハコザの動きが、ほんの僅かだが、止まっている。<br />
タイジは弓<font color="#cc99ff">の籐</font>をハコザの顔面目掛けて打ち付けると、盾を手放して後方に大きく跳躍した。<br />
マズイよ、完全にピンチじゃないか。接近戦であんなに攻められたら&hellip;切り裂かれた腕から血がポタポタと垂れている。<br />
「やっと私から離れることが出来たね」ハコザは楽しそうに言った。「さ、どうする？お得意の魔術でも試みてみるかい？」圧倒的余裕。<br />
やるしかないか。ふと、タイジは煙が晴れつつあるのに気がついた。そして、発見した。床に倒れているマナの姿を。<br />
「マナ！どうした！大丈夫か！？大丈夫か！？」タイジは駆け寄る。倒れた仲間に。愛しき女に。「まさか、死んじゃったんじゃ」<br />
「タイジ君。そんなんじゃ君は落第生だよ。試験だったら赤点。単位は上げられないからもう一年やってもらうことになるよ」ハコザは告げた。「なに、よく観察してごらんなさい。ただね、<strong>眠ってる</strong>だけなんだよ」<br />
タイジはマナの顔に自分の顔を近づけた。呼吸はしている。大きな瞳を閉じて、無邪気な口元を閉じて、こいつは眠っているのか？<br />
「マナ！マナ！おい、しっかりしろ！おい」血の流れる赤い腕で揺すぶってみるが反応は無い。<br />
「ホレ、タイジ君。王子様のキスでお目覚めしてやったらどうだい？」<br />
「ハコザ！お前、一体マナに何をした！」<br />
「なに、私は本当のことしか言わない人間だよ。彼女は深い眠りに陥っているだけさ。ホントだよ」ハコザは指輪をはめた右手で髪をかき上げた。「異生物の研究をしているとね。面白いことが色々分かるもので、その、さっき君が見事打ち負かした<strong>『四つの複合』</strong>の『ベース』には、強烈な睡魔を催させる煙を吐き出す習性があるんだ。<font color="#cc99ff">催眠ガスを体内で精製し、それをまき散らす習性がね</font>」<br />
確かに外傷は無い。毒物の類でもなさそうだ。<br />
マナは、まるでおやすみを言ってベッドにもぐったようにぐっすりと眠っている。「<font color="#cc99ff">催眠ガス&hellip;？</font>」タイジはハコザに背を向けたまま言う。<br />
「並みの人間がかいだら二三日は起き上がれなくなるぐらいの強力なやつさ。成分はよくわかっていない。しかし睡眠薬の一種として薬学科の連中によって研究もされているらしい。私は異生物オタクじゃないから詳しいことは知らないんだけどね。<font color="#cc99ff">医療棟に所属してる君なら知ってるんじゃないかと思ったが&hellip;</font><font color="#cc99ff">あいつを捕獲する時は眠らされないか、大変だったみたいだよ</font>」<br />
「あの異生物は&hellip;」タイジの怒り。「もとはお前の教え子だったんじゃないのか？もとは人間だったんじゃないのか？」<br />
するとハコザは両手を大きく打ち鳴らし、タイジに拍手を送った。<br />
「おめでとう！タイジ君！君は合格だよ！」<br />
「なんだって？」<br />
「私の言った通り<strong>『祓魔師のチューブ』</strong>は持ってきてくれたかな？あれは実は一点物でね。さきほどの<strong>『四つの複合』</strong>はレプリカの筒を使って配合したんだが、やはりいまいちだったよね。でもね、本物の<strong>祓魔師のチューブ</strong>なら、異生物の体から取り出して配合の上書きがいくらでも出来るし、修得していた魔術も継承できる&hellip;<strong>ブラウンシュー</strong>とか使ってこなかった？あれは珍しい魔術だからね&hellip;そして、<strong><font color="#cc99ff">オリジナル版は</font>配合させればさせるほど強さも上乗せ出来る</strong>んだ。だから君達が魔術師大学卒業試験生ご一行を葬ってしまったと聞いた時は、しまった！っと思ったけど、わざわざ私の元にオリジナルのチューブを持ってきてくれるとは&hellip;君には大変感謝をしたいのだよ。だから、君にご褒美を与えないとと私は考えた。そして君の強さはそのご褒美を受けるに充分だと今、確信できた」<br />
「き&hellip;きぃさぁまぁぁ」<br />
「祓魔師だなんて、よく言ったものだろ？その筒は北東連邦のある一部族が悪しき精霊のお祓いに用いていたものを、使い方が間違ってると叱責して<font color="#cc99ff">私がある人物に頼んで調達してきてもらった</font>ものさ」ハコザは髪をかきあげ「そう&hellip;<strong>超人も異生物も、死して肉体が消滅する時、超級成分を分泌する</strong>。大気中に発散されたそれを、<strong>その筒でなら回収することが出来る</strong>んだ。つまり超人の持っていた能力だけを保存することが出来るんだ。それを異生物の体に埋め込めば、融合させることが出来る。簡単だろ？そしたらもう、理性なんていらないんだ&hellip;異生物となって生まれ変わり、苦悩も不安もない人生を送ることが出来る。何も、悩むことはない。何も！何故なら私の命令だけを聞いて生きていけばいいのだから！私の手足となって、私に従うだけの生き方！それが！幸せ！その上、好きな女と一緒になれるんなら君も本望だろ？」<br />
殺してやりたい。この男を！今すぐ！<br />
「ハコザぁぁあああ！！」<br />
タイジは全身の力を集中させて詠唱した！<br />
<strong>purple haze all in my brain!!!!!</strong><br />
これまでに唱えた中でも特大級の雷撃だった。<br />
部屋は真昼のように明るくなって辺りにパチパチと強力な電磁波が爆ぜた。<br />
たとえ幻とはいえ、普通の人間なら確実に即死、家屋に直撃すれば跡形もなく吹き飛ばしてしまうほどの威力であった。<font color="#cc99ff"><br />
その致死的落雷幻術は、タイジが今世界で一番抹殺したいと願った男に、確実に命中した！猛る轟きと共に、憎い相手を、紫の稲妻で打ちのめしてやった。</font><br />
だが「ファーハッハッハッハッハ！」直撃したはずのハコザは無傷だった。<br />
息を切らしながらタイジは「そんな&hellip;嘘だろ」こいつに、僕の魔術<strong>パープルヘイズ</strong>が全く効いていない？タイジはすかさず第二撃を放った。<br />
ジミィィィィィィィィィィィィィィィィ<br />
雷光は発生する。<br />
だが、ハコザの体に傷一つつけられない。<br />
「ふふふ、くくく、しゃしゃしゃ！まぁ、あんまり意地悪するのも失礼かと思うから教えてあげよう。私に魔術は通用しない」ハコザは腕を広げて芝居めいて宣言した。何日も欠席していた生徒が久々に学校に登校して、もう風邪は治ったよ！と友人の前でアピールするかのように。満面の笑みで。「魔術大学を代表する者は、あらゆる魔術の上に立っていなければならない。当然私は現行の魔術を総て完璧にマスターしている。その威力は誰よりも上回っている。だが、それだけでは真に魔術を支配したとはいえない。私には&hellip;」ハコザは絶好調の狂気を見せる。「私はぁ！あらゆる魔術を！克服している！私に対して放たれる魔術攻撃は総て、無為に帰す！私に幻は通用しない！」<br />
じゃ、じゃあマナの魔術も効かないってのか？<br />
タイジはハコザの言葉を疑いはしなかった。もともと魔術なんてものには縁がなかった人生だ。救いがたいほどの邪悪であるとはいえ、自分よりも計り知れないほど多くの時間を魔術の為に費やしている男がそう言うんだ。きっと、そうなんだろう。「だったら&hellip;&hellip;」とるべき道は一つ。<br />
タイジは弓矢での攻撃を選んだ。それしか無かった。<br />
「やってみなさい！やってみなさい！」幸い、ハコザはまだ悦に浸って半ば狂乱状態だ。<br />
ヒュンヒュンヒュンヒュンとタイジは矢を放った。まずは威嚇するように何本も、素早く。「なんだ、君&hellip;」ハコザは声のトーンを落とし「ふざけているのか？今更威嚇射撃のつもりか？それとももうＥＰが無くなったのか」片手の動作だけでタイジの矢をかわす。細身の剣で目にも留まらぬ速度で向ってくる矢を払いのける。<br />
ハコザは先程の戦いもちゃんと見物していたんだ。僕のホーミングアロー。あいつに果たして通じるか？「そんなことない」タイジはそして矢を四本、右手に握って力を注入していった。バチ、バチ、と徐々に指と指の狭間にある矢に電気が宿っていく。さあ、行け！「くらえァ！」<br />
水平に、稲妻が走ってゆく。四本の意思を通じさせた矢！<br />
「ふんふん！」<br />
ハコザは今度は構えをとってタイジの矢の撃退にあたった。<br />
タイジは矢の軌道を操作する！<br />
一本目は真正面から狙い、それはなんなく払い落とせたとしても、両サイドから二本目と三本目が向ってくる。ハコザは剣を真っ直ぐに突いて正面の矢をパックリと裂くとすぐに上空に跳躍した。タイジは矢を追尾させる。上に飛んだならその方向へ！軌道を曲げる！<br />
ハコザはそのまま空中で二本の矢を叩き落した。だが、最後の一本がハコザと同じ高さを飛んでいた。「甘いね！」ハコザはそのまま空中で宙返りを決めた。踵で最後の一本を蹴り落とした。なんという格闘技術。<br />
「ハハハ、なかなか面白い技だったよ、タイジ君」ハコザは地面に華麗に着地すると、タイジに賛辞を述べた。「超人になってまだ日も浅いと聞いていたが、よくここまで使いこなせるようになったもんだ。んーん、私は楽しみだ！君が私の道具となるのが！<strong>パープルヘイズ</strong>も私のものになるし&hellip;そうそう、君の顔はちょっとカエルっぽいと思ってたんだが、巨大蛙の異生物がいてね。今、第一候補はそいつにしようかと思っているんだが&hellip;」<br />
ハコザが勝ち誇ってタイジに語りかけていた最中にであった。<br />
ドグサァァアアア<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>クエストを探して</category>
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    <pubDate>Sat, 15 Jan 2011 11:47:39 GMT</pubDate>
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