オリジナルの中世ファンタジー小説
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「きゃあああぁぁぁぁっぁああっあ」
マナは目を塞いだ。
サキィは動けないながらも剣と盾で異生物の触手攻撃を防ごうとしたが、それも虚しく、盾は弾かれて飛ばされてしまい、上半身を思う様切り刻まれて、赤い鮮血が飛び散っていく。
「た…助けなきゃ」
だが、石化を解く魔術は未だに解明されていない。
一時期付き合っていた彼は、今もまだ大学の中で石像となった状態のまま保管されている。
「そだ…ブルージーンならあいつの動きを止めれるかも」
en blue jeans et blouson d'cuir!!!!!
マナは青い氷の魔術を唱えた。
「少しでも良い!あいつの動きを止めれたら!!」
空気が冷やされて幻の吹雪が、狂ったようにサキィをなぶりつけている七つの融合に向って放たれる。
「駄目か!」
異生物に魔術の効果は表れなかった。
サキィへの猛打がひるむことはなかった。
そればかりではない。今度は異生物が詠唱を行ったのである!
en blue jeans et blouson d'cuir!!!!!
「えええぇ!?」あのバケモン、ブルージーンも使えるっての!?
ブルージーンはマナではなく、異生物「七つの融合」によって放たれた。
さきほどマナが放ったものと同様の、青い吹雪が今度はこちらい向って発射される!
タイジは見ていた。
獣の下半身が石になって動けないサキィの、今度は人の上半身が白く凍り付いていく様を。
マナが寒さに凍えてうずくまって震える様を。
ブルージーンは複数効果の攻撃呪文。
だが、タイジはその幻の氷雪による被害を受けていなかった。
そうだ。
僕は蚊帳の外だからだ。
僕は戦いに参加しない「外の人間」だからだ。
でも、本当にそれで良いのか?目の前で友人が傷ついている。それで、本当に良いのか?
「タ…タイジぃ」
マナが小さく丸まりながら声を発した。体中に霜が降りて、腕が凍って動かせないようだ。
「矢で、撃って、あいつを」
そうだ。
タイジは忘れてすらいた。
お前も戦力なんだからとサキィから受け取った狩猟用のボウガンを!
でも、僕に、何が出来るって言うんだよ。
「早く…サキィ君が、死んじゃう」
タイジはサキィを見た。
その凍てついた氷像の姿を見て、冷たさがタイジの体にも走る。あの野獣の如き勢いは今やどこにもない。
下は石、上は氷、サキィが死ぬ?
ズボンのお尻から伸びたヒョウ柄の尻尾は堅い鉱物へと変貌し、長い両のヒゲには小さな氷柱のようなものまで生じている。
そして、全身を真っ赤な血で染め上げている。
あと、どれだけ、耐えられるんだ?
「タイジ、やってくれるよね?」
「くっそぅ…」
マナの苦しみに満ちた声で、タイジは反射的に背に装備していた武具を手にとった。
タイジは何も考えずにボウガンの矢を放った。
それは勇気ではなかった。一瞬の悪夢の想像が思い切りを生み出した。サキィが死ぬとか、あまりに現実感が無さ過ぎる。天下無双のサキィがやられるわけないじゃないか!でも、現に、それは全くの夢想とは云えない状況に陥りつつある。アンリアルがリアルになる。その恐怖が四肢を動かした。
無念無想の境地でタイジは攻撃を繰り出したのである。
ジュグサアァアとボウガンの矢は七つの融合の顔の一つに命中した。
現実の把握に戸惑いながらもタイジは見事に射撃を成功させた。異生物はサキィを鞭打つ手を止め、痛みに苦しむ。
「よ…く、やった」
凍りついた血まみれの獣人サキィが口を開いた。全身に力を入れる。動け!俺の体!せめて、この腕だけでも良い。右手に握った、剣を。「調子に乗るなよ、怪物」
サキィは、タイジの矢で動きの止まった七つの融合に向って剣を投げつけた。
足が石になってその場から移動出来ない以上、飛び道具でしか反撃を喰らわすことが出来ない。剣は当然一本しか無い。二撃目も追い討ちも叶わない。しかし、それでもやられっ放しではいられない。少しでも反撃を!
剣は怪物に深く突き刺さった。
命中はした。
だが、その代償としての反撃は決定打となった。「ぐぅぅうぁああぁああああ」
サキィの悲鳴が響き渡る。
「え?」
タイジは我が目を疑った。
何?この光景は?
戦慄!
ついにアンリアルはリアルの障壁を突破した。
「そ…そんな…さ、サキィ…」
デニス・サ・サキ・ピーター・ジュンの肉体は上下に分断され、腰から下は石の状態のまま土の上に立ち、腰から上は切り離されて地面に転がっていた。投げ捨てられたボロ雑巾のように。そしてもうピクリとも動かなくなった。
異生物の触手は己が石へと変えた相手の硬質な下半身を砕くことは出来なかったが、別の魔術で凍らせてやわにさせた上半身を、無残にも切断してしまったのである。
「くっそ!くっそ!くっそぉぉおおおお」
マナが突進した。
魔術を諦めたマナが、杖を握って、それでも一直線に敵に向っていく。
タイジには理解が出来ない。
サキィをあんな状態にしてしまった最悪の強敵に向って、何故、勝ち目も希望も全く見込めない無謀な「魔法使いの杖による打撃攻撃」なんてことをしたがるのか?
マナは半狂乱になって突っ込んで行く。
そりゃ、確かにお前は中等科の頃、運動は得意だったな。マラソンをしたら、僕の方が遅かったぐらいだった。腕相撲で負けた時は正直悔しかった。でもさ、それは間違ってるよな。
倒れたサキィを見る。胴体の切り離された惨めな亜人の親友を見る。焦点の定まっていない目が虚ろで、まるで僕を見ているようだった。
「うゎっく!」
マナは異生物の触手で呆気なく弾かれた。のけぞって地面に倒れる。
だからさ、何が起こってるんだよ?
タイジは眩暈を覚え、寒気を感じ、殊にサキィの残酷な有様に吐き気を催しながらも、今「目の前で起こっていること」を必死に把握しようと試みた。
そして、すぐに自分のすべきことを考えるようにした。
サキィが床に無様に転がっている。もう、口汚いお得意の言葉遣いも聞こえてこない。
そこから少し離れたところにマナが横たわっている。気絶しているのかな?マナの必殺の魔術は全く効果が無かった。いわんや打撃をや。
さて、僕がすべきこと。
あれ?超人は異生物と同じく、死ぬと肉体が消滅するっていってたな。ん?じゃサキィってまだ生きてるの?あんな状態になっても…そうか、なんせ超人だもんね、普通の人間じゃないんだもんね。
さて、超人ではない、普通の人間である僕がすべきこと。
けしかけられてボウガンの矢を一発打ち込んだけど、そのことでより一層事態の悪化を招いてしまった感のある僕がすべきこと。一歩を踏み出す。
「行っちゃうんだね」
マナは倒れたままタイジに告げた。
マナは目を塞いだ。
サキィは動けないながらも剣と盾で異生物の触手攻撃を防ごうとしたが、それも虚しく、盾は弾かれて飛ばされてしまい、上半身を思う様切り刻まれて、赤い鮮血が飛び散っていく。
「た…助けなきゃ」
だが、石化を解く魔術は未だに解明されていない。
一時期付き合っていた彼は、今もまだ大学の中で石像となった状態のまま保管されている。
「そだ…ブルージーンならあいつの動きを止めれるかも」
en blue jeans et blouson d'cuir!!!!!
マナは青い氷の魔術を唱えた。
「少しでも良い!あいつの動きを止めれたら!!」
空気が冷やされて幻の吹雪が、狂ったようにサキィをなぶりつけている七つの融合に向って放たれる。
「駄目か!」
異生物に魔術の効果は表れなかった。
サキィへの猛打がひるむことはなかった。
そればかりではない。今度は異生物が詠唱を行ったのである!
en blue jeans et blouson d'cuir!!!!!
「えええぇ!?」あのバケモン、ブルージーンも使えるっての!?
ブルージーンはマナではなく、異生物「七つの融合」によって放たれた。
さきほどマナが放ったものと同様の、青い吹雪が今度はこちらい向って発射される!
タイジは見ていた。
獣の下半身が石になって動けないサキィの、今度は人の上半身が白く凍り付いていく様を。
マナが寒さに凍えてうずくまって震える様を。
ブルージーンは複数効果の攻撃呪文。
だが、タイジはその幻の氷雪による被害を受けていなかった。
そうだ。
僕は蚊帳の外だからだ。
僕は戦いに参加しない「外の人間」だからだ。
でも、本当にそれで良いのか?目の前で友人が傷ついている。それで、本当に良いのか?
「タ…タイジぃ」
マナが小さく丸まりながら声を発した。体中に霜が降りて、腕が凍って動かせないようだ。
「矢で、撃って、あいつを」
そうだ。
タイジは忘れてすらいた。
お前も戦力なんだからとサキィから受け取った狩猟用のボウガンを!
でも、僕に、何が出来るって言うんだよ。
「早く…サキィ君が、死んじゃう」
タイジはサキィを見た。
その凍てついた氷像の姿を見て、冷たさがタイジの体にも走る。あの野獣の如き勢いは今やどこにもない。
下は石、上は氷、サキィが死ぬ?
ズボンのお尻から伸びたヒョウ柄の尻尾は堅い鉱物へと変貌し、長い両のヒゲには小さな氷柱のようなものまで生じている。
そして、全身を真っ赤な血で染め上げている。
あと、どれだけ、耐えられるんだ?
「タイジ、やってくれるよね?」
「くっそぅ…」
マナの苦しみに満ちた声で、タイジは反射的に背に装備していた武具を手にとった。
タイジは何も考えずにボウガンの矢を放った。
それは勇気ではなかった。一瞬の悪夢の想像が思い切りを生み出した。サキィが死ぬとか、あまりに現実感が無さ過ぎる。天下無双のサキィがやられるわけないじゃないか!でも、現に、それは全くの夢想とは云えない状況に陥りつつある。アンリアルがリアルになる。その恐怖が四肢を動かした。
無念無想の境地でタイジは攻撃を繰り出したのである。
ジュグサアァアとボウガンの矢は七つの融合の顔の一つに命中した。
現実の把握に戸惑いながらもタイジは見事に射撃を成功させた。異生物はサキィを鞭打つ手を止め、痛みに苦しむ。
「よ…く、やった」
凍りついた血まみれの獣人サキィが口を開いた。全身に力を入れる。動け!俺の体!せめて、この腕だけでも良い。右手に握った、剣を。「調子に乗るなよ、怪物」
サキィは、タイジの矢で動きの止まった七つの融合に向って剣を投げつけた。
足が石になってその場から移動出来ない以上、飛び道具でしか反撃を喰らわすことが出来ない。剣は当然一本しか無い。二撃目も追い討ちも叶わない。しかし、それでもやられっ放しではいられない。少しでも反撃を!
剣は怪物に深く突き刺さった。
命中はした。
だが、その代償としての反撃は決定打となった。「ぐぅぅうぁああぁああああ」
サキィの悲鳴が響き渡る。
「え?」
タイジは我が目を疑った。
何?この光景は?
戦慄!
ついにアンリアルはリアルの障壁を突破した。
「そ…そんな…さ、サキィ…」
デニス・サ・サキ・ピーター・ジュンの肉体は上下に分断され、腰から下は石の状態のまま土の上に立ち、腰から上は切り離されて地面に転がっていた。投げ捨てられたボロ雑巾のように。そしてもうピクリとも動かなくなった。
異生物の触手は己が石へと変えた相手の硬質な下半身を砕くことは出来なかったが、別の魔術で凍らせてやわにさせた上半身を、無残にも切断してしまったのである。
「くっそ!くっそ!くっそぉぉおおおお」
マナが突進した。
魔術を諦めたマナが、杖を握って、それでも一直線に敵に向っていく。
タイジには理解が出来ない。
サキィをあんな状態にしてしまった最悪の強敵に向って、何故、勝ち目も希望も全く見込めない無謀な「魔法使いの杖による打撃攻撃」なんてことをしたがるのか?
マナは半狂乱になって突っ込んで行く。
そりゃ、確かにお前は中等科の頃、運動は得意だったな。マラソンをしたら、僕の方が遅かったぐらいだった。腕相撲で負けた時は正直悔しかった。でもさ、それは間違ってるよな。
倒れたサキィを見る。胴体の切り離された惨めな亜人の親友を見る。焦点の定まっていない目が虚ろで、まるで僕を見ているようだった。
「うゎっく!」
マナは異生物の触手で呆気なく弾かれた。のけぞって地面に倒れる。
だからさ、何が起こってるんだよ?
タイジは眩暈を覚え、寒気を感じ、殊にサキィの残酷な有様に吐き気を催しながらも、今「目の前で起こっていること」を必死に把握しようと試みた。
そして、すぐに自分のすべきことを考えるようにした。
サキィが床に無様に転がっている。もう、口汚いお得意の言葉遣いも聞こえてこない。
そこから少し離れたところにマナが横たわっている。気絶しているのかな?マナの必殺の魔術は全く効果が無かった。いわんや打撃をや。
さて、僕がすべきこと。
あれ?超人は異生物と同じく、死ぬと肉体が消滅するっていってたな。ん?じゃサキィってまだ生きてるの?あんな状態になっても…そうか、なんせ超人だもんね、普通の人間じゃないんだもんね。
さて、超人ではない、普通の人間である僕がすべきこと。
けしかけられてボウガンの矢を一発打ち込んだけど、そのことでより一層事態の悪化を招いてしまった感のある僕がすべきこと。一歩を踏み出す。
「行っちゃうんだね」
マナは倒れたままタイジに告げた。
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